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#60: ジュリアとニールの情事: ジュリアンの復讐と、ニールが漏らした最悪の証人召喚
あの日、固く閉ざされていたはずの生徒会室の扉。
しかしそこから漏れ聞こえてきた、机が揺れる激しい音と、ジュリアの甘く掠れた喘ぎ声は、瞬く間に学園中に広がる「噂」となった。
翌日の放課後。
渡り廊下や食堂の片隅で、生徒たちは声を潜めながらも、興奮を隠せずに囁き合っていた。
「聞いたかよ……生徒会室でのこと」
「廊下で聞いた奴の話じゃ……」
「相当ヤバかったらしいぜ」
「ジュリアの奴、泣きながら……」
「めっちゃ喘いでたってよ……」
「でも自業自得だろ」
「アニーを寝取ったんだろ、あいつ」
「会長がキレるのも無理ないわ」
「正当な復讐ってやつだよな」
「泥棒猫とはオメガらしいな……」
「え? ジミー会長って?」
「転校生と付き合ってたんじゃ?」
「ルーシャだろ?」
「この間、手を繋いで歩いてたって?」
「あー、あれもう終わったらしいぜ」
「ルーシャも最近イジメられてるじゃん」
「ジミーって、そっち系だったんだな……」
「男子校じゃあるあるだろ」
「アニーもルーシャも美形だからな……」
「会長も欲しがるわけだよ」
憶測が憶測を呼び、噂は生徒会役員たちの手すら離れ、ますますドロドロとした愛憎劇へと膨らんでいった。
かつてないほど淫靡で、歪んだスキャンダルとして——
◇
学園内に蔓延する不穏な噂は、当然のように学園上層部の耳にも届いていた。
重厚なマホガニーのデスク越しに、冷たい視線が突き刺さる。
学園理事長は、厳しい表情で口を開いた。
「ジミー・マクブライド君。君のリーダーシップはこれまで高く評価してきた。しかし今回の件は看過できない。白昼の学園内で、一人の生徒を監禁し、暴行を働いたという噂は事実かね?」
固い椅子に座らされたジミーは、血走った目で身を乗り出し、机を強く叩いた。
「違います! 噂は大きく歪められています! 私はただ、ジュリアがアニーに酷いことをしたから問い詰めていただけです!」
ジミーの声が、広い理事長室に痛々しく響いた。
「ジュリアはアニーの心も体も、無理やり穢したんです! 私はただ……弄ばれたアニーのために、あの下劣なオメガに怒りをぶつけただけです! 悪いのはジュリアの方なんです!」
「……言い分は理解した」
理事長は深くため息をつき、ジミーの必死の弁明を冷たく遮った。
「しかし、君のやったことは明らかな私刑だ。相手がどのような非行に及んだにせよ、暴力による制裁は許されない。……この件は学園として慎重に調査する。君は当面の間、自室での謹慎とする」
その言葉は、ジミーにとって決定的な権力の剥奪を意味していた。
ジミーはギリッと奥歯を強く噛み締め、悔しさと屈辱に震える拳を握りしめながら、理事長室を後にした。
◇
特別寮の最上階、ジュリアンの私室。
学園内にまことしやかに広がる不穏な噂を耳にしたジュリアンは、自室に引きこもったままの弟・ジュリアのことを案じ、ついに世話係のツェー(Tseh)を呼び出した。
「……それが、ジュリアン様。申し上げにくいのですが……」
ツェーは重苦しい沈黙の後、苦渋に満ちた表情で言葉を続けた。
「ジュリア様が……ジミーの手によって、無惨に組み敷かれてしまいました。私がお側にいながら、お守りすることができず……本当に申し訳ありません」
その瞬間、ジュリアンの冷ややかな琥珀色の瞳の奥で、底知れぬ暗い炎が静かに、しかし確実に燃え上がった。
「……ジミーが、ジュリアを?」
低く甘い声からは、背筋が凍るほどの殺気がゆっくりと滲み出ていた。
ジュリアンは手にしたグラスを静かにテーブルに置き、薄く唇を歪めた。
「ジミー・マクブライド……。我が弟ジュリアの屈辱は、私の屈辱だ」
長い指で自分の唇をなぞりながら、ジュリアンは静かに、しかしはっきりと告げた。
「絶対に……許さない」
その甘く冷たい声音には、明確な殺意と、底の見えない執着が混じっていた。
◇
その夜。特別寮のジュリアの私室。
コン、コン、コン。
「僕だよ、副会長のニールだよ。担任の先生に頼まれてプリントを持ってきたんだ。ここに置いておくね」
扉越しに声をかけたが、部屋の中からは何の返事もない。ニールがしばらく待った後、諦めて踵を返したその時だった。
ガチャリ。
扉が静かに開き、か細い声がニールの背中を捕らえた。
「……待って、ニール」
振り返ったニールの目に飛び込んできたのは、乱れた髪と、潤んで虚ろな琥珀色の瞳だった。そして、部屋の奥から漂ってくるのは、退廃的で甘く淫靡なオメガの香り。
「学園で、僕のこと……噂になってるんだろ?」
「そんなことないよ。ただ体調を崩して休んでるって……」
「いいんだよ、隠さなくたって」
ジュリアはふらりと一歩踏み出すと、力なくニールの腕を掴み、そのまま部屋の奥へと引きずり込んだ。
「えっ……お、おい、ジュリア!?」
ニールの動揺した声が廊下に響くが、ジュリアは構わず彼を部屋の中に引き入れ、背後で静かに扉を閉めた。
薄暗い室内で、ジュリアはニールに寄りかかるように身体を預け、熱っぽい吐息を漏らした。
その瞳は、どこか壊れたように虚ろで、甘く危険な光を湛えていた。
「ねえ、ニール……。ぼくのこと、慰めてよ……」
ジュリアはそう囁くと、首元に細い指をかけ、嵌められていたチョーカーの一つを外して、コトリと床に落とした。
途端に、甘く濃厚なオメガのフェロモンが部屋の中に広がっていく。
「もう一つは……あなたが外して、ニール」
妖艶で蕩けた瞳と甘い声に、ニールの理性はあっけなく溶かされた。
ニールはジュリアの細い腰を荒々しく抱き寄せ、そのままベッドへと押し倒した。二人は暗い部屋の中で激しく身体を重ね、淫靡な水音と甘く乱れた吐息だけが夜通し響き続けた。
事後——
荒い息がようやく落ち着いた頃。
ニールはベッドにぐったりと横たわるジュリアの白い肩を優しく撫でながら、ふと何かを思い出したように口を開いた。
「……そういえばジュリア」
「……なに?」
「お前、アニーに酷いことしたの?」
「え?」
「親父……いや、理事長が、ジミーの言い分を確かめるって……」
「どういうこと?」
「ジミーのが言うには、お前がアニーが酷いことしたって……」
「え?」
「…… 嘘だろ? そんなの……」
「うん。そんなわけ、ないじゃん……」
ジュリアは甘えるようにニールの胸に顔を埋め、キスを落とすと、ぼそりと続けた。
「その話、詳しく教えて、ジミー♡」
「親父は、その裏付けを取るために……明日、アニーを証人として理事長室に呼び出すんだってさ」
その言葉を聞いた瞬間、ジュリアの背筋に氷のような悪寒が走った。
つづく
—
明日、証人として理事長室に呼び出されるアニーに偽証を強要するジュリアン。
「……さあ、復唱しろ、アニー」
次回
#61: 偽りの告白と見えない蜘蛛の糸: ジュリアンの冷酷な脅迫と、屈服するアニー
「バレンタインの日……僕は体育館裏に無理やり呼び出されて……っ。体を……汚されました……!」
お楽しみに!
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