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#67: 二つの枷と決別の駅: アルバートの執着と、財布に隠された過去の紋章
嫉妬に駆られたアルバートの心ない言葉に深く傷ついたルーシャは、夜のロンドンの街へと飛び出してしまった。
路地から大通りまで、アルバートは必死にルーシャを探し回った。そして最後に辿り着いたのは、以前立ち寄ったことのある場末のパブだった。
扉を開けた瞬間、紫煙と酒の匂いが充満する店内を鋭い視線で探す。
「……いた」
パブの奥のボックス席で、ルーシャはガラの悪い男たち数人に囲まれ、グラスを片手にキャッキャと笑いながらすっかり酒に酔っていた。頰は桜色に染まり、目もとろんとしている。
アルバートは迷わず大股でテーブルに近づくと、迷わずルーシャの細い腕をガシッと掴み上げた。
「帰るぞ、この不良が」
「離して! おじさまなんか大嫌い!」
突然現れたアルバートに目を丸くし、ルーシャが激しく抵抗する。同時に周りの男たちが立ち上がり、凄み始めた。
「おい、何だよこのおっさん」
しかしアルバートは彼らを一瞥しただけで、圧倒的なアルファの威圧感を全身から放った。
男たちは一瞬で息を呑み、その場に凍りつく。
「帰るぞ」
アルバートは低い声で一言だけ告げると、暴れるルーシャを強引に抱きかかえるようにして店を引きずり出した。
◇
ペントハウスのリビング。ソファにルーシャを押し込むと、アルバートは冷たく見下ろした。
「お前には、少しお仕置きが必要だな」
アルバートの手の中で冷たく光ったのは、二つ目の銀のチョーカーだった。
「え……?」 「罰として、お前はこれからチョーカー2つだ」
カチン——。
冷たい金属音が響き、二つ目の輪がルーシャの細い首に重なってはめ込むとアルバートは冷たく背を向けた。
バタンッ!
乱暴に扉を閉め、アルバートは一人、自分の寝室へと入っていってしまった。
◇
翌朝。
アルバートが寝室から出てきた瞬間、部屋の静けさに胸がざわついた。
「ルーシャ?」
呼んでも返事はない。気配が、まるで最初からここにいなかったかのように消えていた。
机の上に、二つのチョーカーが冷たく置かれているのを見つけた瞬間、アルバートの顔から血の気が引いた。
……ふざけるな。
上着を乱暴に羽織り、アルバートはほとんど走るようにペントハウスを飛び出した。
ロンドン駅の待合室。白い蒸気の煙が立ち込める中、片隅のベンチに小さくうずくまっている後ろ姿を見つけた。
足元の古びたトランク。俯いて膝の上で手を固く握りしめているルーシャ。
アルバートは荒い息を吐きながらその前に立ち、押し殺した低い声で言った。
「……どこに行こうってんだ」
ルーシャがゆっくり顔を上げる。その瞳は昨夜の弱さなど微塵もなく、静かで冷たい決意だけが宿っていた。
「おじさまの元には、もういられない。僕は籠の中の鳥じゃない」
その言葉が胸に突き刺さる。アルバートの拳が、無意識に強く握られた。
「お前、行くあてなんかあるのか」
「なんとかするよ」
「どうやって? ……まさか、体を売るような真似でもする気か」
ルーシャが唇を噛む。アルバートは苛立ちを抑えきれず、懐から財布を乱暴に取り出すと、ルーシャの胸に押し付けた。
「どうしても行くなら、これを持っていけ……」
ルーシャが何か言いかけたが、アルバートはそれを遮るようにその細い肩を強く掴んだ。指が食い込むほど強く。
「落ち着いたら必ず手紙を書け。一通でも来なかったら……お前を必ず探し出して、今度こそ二度と逃げられないように鎖で繋いでやる。わかったな」
その声は低く、怒りと執着と、隠しきれない疼きが入り混じっていた。
ルーシャは小さく息を飲み、やがて儚く微笑んだ。
「……うん、わかった。手紙書くよ」
発車のベルが無情に鳴り響く。
汽車に乗り込んだルーシャが窓から顔を出し、手を振った。
「おじさま、ありがとう!」
蒸気機関車が動き出す。アルバートの姿が遠ざかり、白い霧の中に溶けていく。
席に座ったルーシャは、渡された財布をそっと開いた。
内側の刺繍に気づいた瞬間、指が止まる。
「……え?」
それは、孤児院時代からルーシャがずっと大切にしていた、あのエンブレムと同じ紋章だった。
ガタン、ゴトンと揺れる車内で、ルーシャはただ呆然とその模様を見つめ続けた。
つづく
—
ルーシャへの憎悪を募らせていたジミー。だが、突きつけられたのは、彼が信じていた復讐を根底から覆すあまりにも残酷な真実だった。
「ルーシャは、あなたのお姉様を守るために、わざとあんな態度をとったんです……っ!」
次回
#68: 偽りの復讐と炸裂する平手打ち: アルバートの断言と、暴かれたジュリアの謀略
「……ジュリア様が、仕組んだんです」
お楽しみに!
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