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#77: 雪原の足止めと最後の一室: 猛吹雪が閉ざした密室と、カバンを失ったルーシャの焦燥

シカゴの凍てつく冬の風が窓を激しく揺らす夜。 ルーシャは、ニューヨークから届いた一通の手紙を何度も繰り返し読んでいた。 便箋には、サリーの憔悴しきった様子が、ツェー(Tseh)の心配そうな筆致で綴られていた。オザンナの介護に明け暮れ、細かった体がさらに痩せ細り、笑顔すら無理に作っているという。 手紙を胸に押し当て、ルーシャは深く息を吐いた。 「……今年のクリスマス休暇は、ニューヨークへ行こう」 決意を固めたその日のうちに、彼は列車の切符を手配した。 ◇ そして、クリスマス休暇がやってきた。 出発の身支度を整えたルーシャは、見送ってくれるアルバートを真っ直ぐに見つめて釘を刺した。 「しばらく留守にするけど……もし僕がいない間に記憶が戻っても、勝手に出て行ったりしたら絶対にダメだからね」 「わかったよ。どこにも行かずに待っているから、安心してお行き」 アルバートの穏やかな返事に少しだけホッと胸を撫で下ろし、ルーシャはアパートの扉を開けた。 クリスマスを間近に控えたシカゴ駅のホームは、帰省客でごった返していた。大きなボストンバッグを提げて自分の車両を探していると、聞き覚えのある低い声が背後からかかった。 「あれ? ルーシャ。君もこの列車に乗るのか?」 振り返ると、そこには仕立ての良い厚手のオーバーコートを着込んだレオノラが立っていた。革の旅行鞄を持った彼は、病院で見せる冷たい表情とは違い、どこか柔らかい雰囲気を纏っていた。 「レオノラ……! どうしてここに?」 「実家に帰るんだよ。僕の生まれはニューヨークのブルックリンなんだ」 意外な事実を知らされ驚くルーシャに、レオノラは少し不器用に誘ってきた。 「……もし良ければ、隣の席でいいか? 長旅で話し相手がいないのも退屈だろう」 「うん、ぜひ!」 ルーシャが明るく頷くと、レオノラの目元がわずかに緩んだ。 列車は当初快調に雪原を駆け抜けていたが、オハイオ州とペンシルベニア州の境に差し掛かった頃、突然の猛吹雪に襲われた。 横殴りの吹雪は視界を真っ白に染め上げ、列車は緊急停車を余儀なくされた。車掌のアナウンスは絶望的だった——線路凍結のため、当駅で無期限運休。 「ルーシャ、僕たちも行くぞ」 レオノラに急かされ、ルーシャは慌ててコートを羽織った。レオノラに腕を引かれるまま吹雪のホームへ飛び降り、駅前の町へと向かおうとしたその時—— 「あっ……!」 ルーシャはハッとして足を止めた。 「カバン……! カバンを車内に置きっぱなしだ!」 慌てて雪で滑るホームを戻ったが、車両のドアに手をかけた瞬間、列車がゆっくりと動き出した。ルーシャが叫ぶ間もなく、列車は吹雪の中へと消えていった。 呆然と立ち尽くしたルーシャは、慌てて駅員のところへ駆け寄り事情を説明した。しかし駅員は申し訳なさそうに首を振り、荷物が戻ってくるのは明日の朝以降になると告げた。 「荷物のことは明日考えよう。今は宿を探すのが先だ」 「でも……」 「大丈夫。なくなったわけじゃないんだから」 そう言ってレオノラは半ば強引にルーシャを引っ張り、駅前の町へと向かった。しかし小さな町の宿はどこも満室で、ようやく見つけた古びたホテルの支配人が申し訳なさそうに言った。 「残っているのは最後の一室だけなんです……キングサイズベッドが一つの部屋ですが……」 ルーシャとレオノラは一瞬だけ顔を見合わせた。 遊園地の夜にレオノラのカミングアウトの記憶が、ルーシャの脳裏をよぎる。同じオメガ同士とはいえ、妙に意識してしまう自分がいた。 「……僕は構わないが、ルーシャ、は?」 レオノラの視線がまっすぐにルーシャを捉える。 ルーシャは耳まで赤くなりながら、慌てて頷いた。 「だ、大丈夫……!」 案内された部屋は、想像以上に狭かった。キングサイズベッドが部屋のほとんどを占領し、二人が立っているだけで息が詰まりそうなほどの密室だった。 雪に濡れたコートを脱ぐと、暖房が効きすぎた部屋のせいか、ルーシャは自分の体が熱を帯びていることに気づいた。 (まさか……こんな時にっ……) 背後で静かに荷物を置くレオノラの気配が、妙に大きく感じられる。——閉ざされたドア。暖かすぎる室内。そして、体の奥底からじわりと這い上がってくる、嫌な熱の予感。 (まずい!! ……抑制剤はカバンのだ……) 外では猛吹雪が荒れ狂っているというのに、ルーシャの胸の奥は、別の理由で激しく高鳴り始めていた。 つづく — 猛吹雪で足止めされたホテルの密室。スチーム暖房が効きすぎた過酷な状況の中で、ルーシャは突然の激しいヒートの予兆に襲われてしまう。 「……ふうん、そんな風にしてるんだ。ルーシャは……」 次回 #78: 雪原の密室と禁断の処置:ヒートに支配されたルーシャはレオノラの救済処置(手コキ)で足ピン! 「……ふふ、それイク時の癖なの? 可愛いね」 お楽しみに!

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