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#89: 冷酷な放逐と狂暴な本性: 凍てつく街に追われるジュリアと、理不尽な暴力に怯えるルーシャ

激しい目眩から覚めたペンドルトン夫人——ヒルデの瞳には、狂気すら感じさせる激しい怒りが宿っていた。 一族の誇り高い血筋から、アルファでもオメガでもない「ベータ」が生まれたという事実。しかもその父親が、最愛の甥・ジミーの子ではなく、ニール・ファーガスンという取るに足らない男との不義の子だったという事実は、ヒルデのプライドを完全に粉々に打ち砕いた。 血走った目で、震えながら生まれたばかりの赤ん坊を抱きしめるジュリアを見下ろすヒルデの全身からは、アルファとしての圧倒的な威圧感が溢れ出していた。 「……今すぐその薄汚いベータの赤ん坊と共に、この屋敷から出て行きなさい!」 泣き崩れ、必死に縋り付こうとするジュリアを、ヒルデは冷酷に突き放した。 「せめてもの情けよ。ツェー、お前はジュリアに付いていきなさい。二度と私の前に顔を見せるんじゃない」 震える手でメイドを指差すヒルデの声は、怒りで低く歪んでいた。 有無を言わさぬ怒号と共に、ジュリアとツェー(Tseh)は着の身着のまま、凍てつく冬のニューヨークの街へと文字通り放り出された。 二人が這うようにして屋敷の重厚な玄関から追い出された直後、ヒルデは数枚の僅かな金貨が入った小さな袋を、蔑むように雪の上へと投げ捨てた。 チャリ、という冷たい金属音が響き、ツェーが涙を流しながら慌ててそれを拾い上げる。 その背後で、ペンドルトン邸の巨大な扉が、バタンと冷酷な音を立てて固く閉ざされた。 ◇ ところ変わり、シカゴはルーシャのアパート。 ニューヨークの地獄のような修羅場とは対照的に、四畳半の部屋にはまだ前夜の甘く重い余韻が残っていた。 激しく、自暴自棄になるように身体を求め合ったルーシャとジミー。朝の光が差し込む中、ルーシャはベッドで心地よさそうに眠るジミーの頰にそっと指を這わせ、儚い微笑みを浮かべた。 「じゃあ、行ってくるね」 恋人のような甘い空気を残したまま、ルーシャは実習へと向かうためにアパートを後にした。 しかし、病院に着き実習が始まると、ルーシャの頭の中はすぐに処理しきれない混沌で埋め尽くされた。 ジミーの温もりで一時的に寂しさを紛らわせたつもりだったが、そんなもので心の傷が癒えるはずもなかった。何より、あの街灯の下で親しげに指を絡め合い、夜の闇へと消えていったレオノラとアルバートの姿が、瞼の裏に焼き付いて離れない。 (どうして……おじ様が、レオノラと……) その疑問がぐるぐると渦を巻き、ルーシャの手元はおぼつかなかった。薬の分量を間違え、カルテを読み違え、指導医の質問にも上の空で的外れな答えを返す。 そんなルーシャの様子を、離れた場所から切れ長の瞳がじっと見つめていた。 「——ルーシャ。ちょっといいかな」 放課後、誰もいなくなった休憩室で、レオノラがルーシャを呼び止めた。 いつも通りの冷徹な優等生の仮面。首元には黒いチョーカーがきっちりと嵌まっている。 「今日の実習、酷かったよ。何度も簡単なミスをして、らしくないじゃないか」 レオノラは少し声を和らげ、覗き込むように言った。 「何かあったの? ……しっかりしなよ。君らしくもない」 いつもならその不器用な優しさに救われていたかもしれない。しかし今のルーシャにとって、レオノラの言葉は複雑な棘となって胸に刺さった。 胸の奥からドロリとした嫉妬と惨めさが込み上げ、ルーシャはレオノラの外套の袖を振り払うようにして、ムキになって拒絶した。 「何でもないよ! 僕なら大丈夫だから、放っておいて!」 「ルーシャ……?」 怪訝そうに眉を寄せるレオノラを置き去りにして、ルーシャは逃げるように病院を飛び出した。 ◇ 疲れ果て、冷え切った身体を引きずりながらアパートのドアを開けた瞬間、ルーシャは強烈な酒の臭いに顔をしかめた。 薄暗い部屋の中、ジミーが昼間から安物のウイスキーの瓶を抱え、靴を履いたままシングルベッドにだらしなく寝そべっていた。朝の穏やかな空気は、跡形もなく消えていた。 「遅かったじゃないか、ルーシャ」 ろれつの回らない声でニヤリと笑うと、ジミーはベッドから起き上がり、獲物を見つけた獣のような目でルーシャに近づいてきた。 「こいよ、昨日の続きをしようぜ」 大きな手がルーシャの細い肩をがしっと掴む。酒臭い荒い息に、ルーシャは本能的に嫌悪感を覚え、思わず顔を背けてその胸を押し返した。 「やめて、ジミー……! お酒臭いよ、今はそんな気分じゃ——」 パチンッ!! 激しい衝撃がルーシャの頰を襲った。 「あ……っ!」 床に激しくへたり込んだルーシャを、ジミーが怒りに血走った目で見下ろす。 「なんだその目は! オメガの分際で偉そうに!」 「ひっ……!」 髪を乱暴に掴み上げられ、ルーシャは大柄な体躯に床へと押し倒された。 「いや……離して、ジミー……っ!」 「うるせえ! 大人しくしろよ!」 ジミーは片手でルーシャの両手首を床に縫い付け、もう片方の手で自分のベルトをカチャカチャと乱暴に引き抜いた。金属のバックルが激しく音を立て、ジミーは興奮した息を荒く吐きながら、ルーシャの下着を強引に剥ぎ取ると力強くルーシャをひっくり返した。 「キライ……! ジミーなんか大嫌い!」 「うるさいんだよ!」 ——ずぢゅっ*❤︎。 「あ”っ……っ/////」 圧倒的な力で後ろから貫かれた瞬間、ルーシャの身体が激しく跳ねた。 「あ”……あ”ぁ’……っ/////」 痛みと屈辱の中で、ルーシャはシーツを強く握りしめた。 (これは……罰なんだ) おじ様を裏切り、レオノラと欲にまみれた自分への、神様からの罰——。 ルーシャは抵抗するのをやめ、ただ静かに、冷たい床の上で奥歯を噛み締め、涙を流しながらジミーに身を委ねた。 つづく — ジミーの狂暴な本性に怯え、理不尽な暴力を受け入れてしまったルーシャ。しかし行為の後、ジミーは激しい涙を流して縋るように謝罪する。 「ごめん……ごめんね、ルーシャ……っ。痛くしたね……本当にごめん……」 次回 #90: 涙の謝罪とささやかな希望: 歪んだ温もりに依存するルーシャと、更生を誓うジミー 「うるせえな! 一発大きく稼いで、お前にも美味いもん食わせてやろうと思ったんだよ!」 お楽しみに!

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