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stage.4 現在
門扉、壁面、屋根、全てが闇の如く黒い。底のないほど深い深い闇だった。
アスナは茫然としながら、高く大きな魔王の城を見上げた。まるで地獄への入り口のようで、足がすくみそうになる。
「じゃ、行くか。」
微かな怯えを捨てるように腹から声を出して、アスナは足を踏み出した。後ろからは、ツキトが無言で付いてくる。
臆している風でもないのだが、朝から言葉数が少ない。いつも飄々としているツキトでも、やはり魔王が相手となれば多少は緊張するのだろう。
―――これが終われば。
あれからあちこち旅をして、やっとここまでやって来た。
魔王を倒せば、この旅が終わる。
その後、ツキトがどうするつもりなのか、知らぬままここにいた。
できる事なら魔王討伐を成し遂げた後も、ずっとツキトと旅を続けたいと考えている。
―――それにしても、ガランとしてる。
魔王の城だと云うのに、低級魔物のの1匹も出てこない。耳を澄ましてみても、城内に誰もいないかのように静まり返っている。
永遠と続くような長い階段をのぼり、廊下を抜けると赤く絢爛な扉に迎えられた。
「ここか?」
アスナが右手で押すがビクともせずに、左手を加えた両手で重い扉を開けた。
ギギッ――――と、低い音が鳴る。
扉の向こうの室内は黒と赤の配色で、広く天井は高かった。奥に玉座らしきものがあるが、そこに魔王はいない。待ち構えているものと思っていたが、違ったらしい。
どうしたものかと首を傾げつつ、主のいない玉座へ近づいた。罠に用心して進むが何も起きず、玉座へ辿り着いてしまう。
「なぁ、どうする―――」
尋ねながらアスナが振り返ると、目の前ではツキトが剣を抜いていた。
「え―――?」
剣などいつの間に入手したのだろうか―――と、まず思う。その後に、真っ黒で禍々しい剣に目を奪われた。
まるで、この城のように圧倒的な黒だ。もしかすると城の剣なのかもしれない。
アスナが呆けて立っていると、ツキトが可笑しそうに笑い出す。見たことがない嫌な顔だ。
「ラストステージを始めようか、アスナ。」
ツキトは笑いながら手に持つ黒い剣を、アスナへ向けた。
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