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第9話 恐喝?

夏の扉を叩くのは 9 ー 恐喝 ?ー 「 さて、どういう理由で校内の現場で裸になったんだ?」 「 金を盗んだろうって……嫌がらせ、嫌がらせだよ 」 「 あの男の金を高光がか? 実際はどうなんだ?」 「 盗んでなんかいないよ 」 「 じゃあどうして疑われた?」 息を大きく一つ吐くと、 「 ……やっぱり俺、言えない 」 「 高光。出よう……」 確かにこいつは今何かいいかけてやめた。こんな所でできる話じゃないな、 俺は渋る高光を連れ家に帰った。 地下のガレージに車を入れると、周りの車を見回して口が開いたままの高光をエレベーターに載せる。 「 家にエレベーターがある!」 俺にとっては当たり前なことがそんなに珍しいか。 まぁどっちにしても今日はそんなことに構ってる暇はない。 居間のソファに高光を座るように促すと、 「 俺、こっちでいい 」 と落ち着かなげに絨毯を敷いた床に胡座をかいた。 「 さっきの話の続きだ。 何か言いかけただろう 」 しまったと言うように落ち着かない高光にもう一度詰問する。 「 おい、言いかけたのは何の話だ?」 「 おれ、俺 。あの平田って、さっきの男の名前なんだけど、 あいつ前から俺は知り合いなんだけど 」 「 あいつが知り合い?」 コクコクと頷きながら、高光は渋々先を続ける。 「 おたくの学校の先生と喋ってるところを偶然に見ちゃって 」 時々跳ぶ話を宥めすかしながら聞き出す。 どうやらうちの教員が何かしていたのを見つけた平田という男がその教員を脅していたらしい。それを咎めたのが高光。 「 それでなんでお前のさっきの話と結びつく?」 「 言わなきゃダメ?」 「 ああ、ここまで聞いたら最後まで聞かないことには帰せないな 」 高光はしばらく絨毯を指で擦ったり、 足を組み直したり落ち着かずに瞳をクルクルさせながらしばらく何度もため息をついていた。 それでも、根は正直で素直なのだろう、辛抱強く後の話を待ってる俺の方を見ないようにしながらも、小さな声で語り出す。 「 俺さ、施設で育ってガキの頃ちょっと悪さした時にあの平田って男と知り合ったんだ。 警察には言わずに見逃してやるからってあいつの言いなりになってた。 あいつは男も抱けるから。 その時光の母親が平田の通ってる店の世話になってて、結局俺そこで光の母親と出会ったんだけど。 それで 」 「 男も抱ける? 」 それは…… いやこれは後で気にするとして大事な先を問わないと、 「 それで?続きは?」 「 平田が脅し取ったお金、ロッカーに入れてたのがなくなったって。 脅してるのを知ってるお前が盗ったとしか思えないって 」 「 お前は絶対に盗んではいないんだな?」 「 当たり前だよ!ひどいよ……俺そんなことしない、そんなお金返した方がいいって平田に言ってたくらいなのに 」 「 そうだな……すまない一応聞いとかないと、というか、そのくらいの気持ちだった 」 すっかり落ち込んでしまった高光に言いすぎたと反省をする。 自分のあまり言いたくない過去の話をするだけでさぞ嫌な気持ちになってるだろうに、俺も大人気がなかった。 ほっておけない気持ちのまま出た言葉。 「 もう遅い、今夜は泊まっていけ。俺も頭の整理をするから、又聞きたいことが出てくるかもしれない 」 「 え?泊まるって。俺明日仕事なんだけど 」 「 どうせ一緒の場所に行くんだろ、朝お前の家に着替えのために寄ってやるから 」 「 でも、何にも持ってないし……」 「 俺のうちのものを使え、そうだな風呂に入りたいだろ。こっちだ 」 困惑している高光を風呂場に案内する。 少し落ち着いて考えないと今朝の職員室の盗難事件と関係あったら大変な事になりそうだと気持ちは重くなる。 盗難と恐喝、しかしこんな事件のことよりなぜか 『 男が抱けるからって 』 という言葉に引っかかってる俺はどうしたんだろう? 三枝先生、そうだ。 引っかかったのはいつもは俺が目をそらす彼の眼差しの先だった。

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