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第11話 もっと獣
夏の扉を叩くのは 11
ー もっと獣 ー
「 どうして……」
「 あんたのヒロシさんを見る目、見てりゃわかるよ 」
「 お前がなんでヒロシさんって 」
「 あはは、やっぱり嫉妬してた?
でもまだ、多分やって…… 」
ふざけるなと俺は言ったのか、それは相手に伝わったのか、
わからないまま若い强い身体をそれ以上の力で押し込めた。
「 なに、俺でいいの?」
揶揄するように潜めた言葉に一気に高揚した怒りの矛先が向かったのは、裸体を晒し、性器をあらわにしてなお、現実を笑うような顔を向ける高光にだった。
ベンチに頭を押さえつけ、膝でのしかかった太もも。その筋肉で覆われた体に叩きつけた拳。
気がつけば、自分の手が痛むほど相手を痛めつけていた。
「 こ、これで…終わりかよ 」
口の中から赤い血の混じった唾を吐き出しくの字に曲げた身体から首を起こす。
人を痛めつけて俺の上がりきった体温が冷める頃、
ようやく身体を起こした高光。
「 あんたもおんなじなんだな……
いいよ、俺慣れてっから 」
もっとも聞きたくなかった言葉を吐く口を片手で塞ぐ。
押さえつけても跳ねる身体は若い雄の匂いを汗とともに強烈に立ち上らせる。
同じ性を持つこの獣を征服したい。
俺の頭の中の悪魔が囁く。
こいつなら大丈夫だ……慣れてるって、なにをしても。
気がついた時には暴力は性を求める衝動に変わっていた。
熱い肌を揉みしだきながら鎮めた高光の中はきつく細微に俺のものをしぼりあげる……
目も口も上半身すら合わさず打ち付ける律動に、身体は開放を目指して駆け上る。
俺は溜まった澱みを全てぬかるんだ内臓に叩きつける。吐き出した後もなお、芯を持つそれを咥内からずるりとひきだすと、門の付近の筋が縋るのがわかった。
視線を落とした先にあるのは確かに女のものではない固い尻の盛り上がりで、狭間から漏れるのは白く濁った精液。
その種となった己の行為に吐き気がした。
トイレに飛び込み胃の中のものを全て、胃液まで出し切った俺が浴室に戻るとそこにはもう高光の姿はなかった。
頭の中に繰り返し出入りするのは、
閉 じている場所を暴く結合の場面。
フラッシュバックのように蘇る人を殴った拳の痛み。
そして諦めて微かになにかを言い残したような高光の顔。
俺は車のキーを掴み地下車庫から車を出して夜の道をひたすら記憶のある限り辿ったが高光の姿を見つけることはできなかった。
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