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第21話 モノクローム

夏の扉を叩くのは 21 ー モノクローム ー 筋肉の通った二の腕が、薄紫の汗を含んだ作業服から伸びる。 その男の匂いを嗅ぎ、覗き込んだ 高光の眼はまた、光を無くしたように曇る。 まただ、涙がないのに泣いてるように見えるその眼。 俺はこの眼を見るとやりきれない気持ちでいっぱいになる。 「 わかったよ……」 力なく答える言葉に、 「 お前、勝手に動くなよ。特にあの平田ってやつには近寄るな 」 そして、余計な言葉を足してしまった事を俺は後悔することになる。 「 お前が動くと光君の立場が悪くなるかもしれない。 まずは保護者になってる藤間さんに話をするから、俺が話すまで待ってるんだ 」 ぐっと握り締められた拳に俺は眼をやると、再度念押した。 「 待ってろ、しばらく我慢してくれ 」 頷かない高光に焦れた俺は奴の腕を引き駐車場まで連れて行く。 このまま帰すわけには行かない気がした。俺は高光に乗るように促す。 家に着くまで拳を固く握ったままの高光は一言も発せずに、シャワーをつかい俺に抱かれる。 無言のまま、ひたすら何かを我慢するように、そんな頑なになった高光の肉体は愛撫には文句なく応えてくる。 勢いよく反応し、硬く勃ち上がったものを擦りながら、顔を伏せて唇を噛みしめる高光に苛立つ。 「 こっちを向けよ、俺を見ろ 」 上がる体温に伝える言葉はどんどん粗くなる。 気持ちの込められない交合は挿入し唐突に噴き上がった快感のまま、果てなく精を出しきって終わる。 汗ばんだ身体を拭おうと枕元のタオルを手繰り寄せると、そのタオルはもうぐっしょりと濡れていた。 泣かないはずの高光は喘ぐ声を抑えようとタオルを噛み締めていたことに今更気づいた。 身体を差し出すことに慣れた、こんな身体に溺れる自分に嫌気がさした。そんな気分とは裏腹に高光をほっておけない事に頭の中が混乱を極める。 こいつの何が俺をこんなに惑わすんだろう…… 横たわっていた汗ばんだ背中の窪みが綺麗に反る。息を潜めて起き上がろうとする肉体に掌を這わすと、心臓の鼓動が伝わってくる。 俺の隣に人がいる。一人でも平気だと思っていたモノクロームの部屋が薄く色を成した。

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