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第34話 ハッタリ

夏の扉を叩くのは 34 ー ハッタリ ー 「 友人です 」 「 え?」 「 高光さんは私の友人です 」 榛の木刑事も友人という言葉を把握しかねて居る。そりゃそうだろ。言ってる俺も自分に突っ込み入れたいんだから。 「 お友だち、ですか 」 「 わかってます、親でも親戚でもない私に話ができないのは、でも、これからお伝えする内容が高光さんにとって良い情報になるかどうかを私が判断するのにはある程度彼がなんでここから帰れないのか知る権利はあると思いませんか?」 俺がまくし立てると、目を僅かに眇めた榛の木刑事は 「 私たちは知ってらっしゃる事を話す事をお勧めしますよ。あなたに判断してもらう必要はないと思います 」 その時、若いスーツの男が入ってきた。榛の木さんを入り口近くに呼び出すと何か耳打ちをしている。 暫く二人で話し合っていたが、 若い方が部屋から出て行くと、ソファに座りなおした榛の木刑事が態度を変えた。 「 菅山さん、貴方がご存知の事を聞くのに多少こちらの情報をお伝えしますよ。 高光、さんは以前より親しい付き合いのあった平田さんのある方面の仕事を手伝っていたんではという疑いがあるんです 」 「 ある方面?」 「 まぁ、いわゆる恐喝ですね 」 「 高光、さんが加担してたという証拠でもあるんですか?」 「 そこまではちょっと…… 何をご覧になったんですか?話してください 」 思った以上に高光の周りの事態は悪かった。 高光が俺に話した、平田が『おたくの学校の先生と喋ってるところを偶然に見ちゃって 』というところから、 うちの教員が何かしていたのを見つけた平田という男がその教員を脅していたらしい。それを咎めたのが高光だという事。 平田が脅し取ったお金、ロッカーに入れてたのがなくなったのを 高光のせいだと平田に疑われて嫌がらせをされていた場面を俺が目撃した話を伝えると、腕組みをして榛の木刑事は暫し考えてる様子だった。 「 その先生が林さんだったという事ですね 」 「 多分そうだと 」 「 高光さんは貴方に平田さんが何をネタに脅かしていたとかは言いませんでしたか?」 「 ええ、高光さん自体も平田さんが何をネタにしてたかは知らないようでした 」 「 高光さんが平田さんと昔馴染みだったのはご存知でしたか?」 来た…… 「 はい聞いています 」 「 わかりました。ご存知の事は? 全部ですか?」 流石に林先生が何をネタに脅されていたかは刑事が言わない限り俺の口からは言えない。 うちの生徒が関係してることだし。 どこまで調べがついているんだろう。 俺が黙ったままで出て行く気がないのを察した榛の木刑事が胡乱げな顔をする。 「 高光さんは参考人ですか?任意出頭ですよね 」 「 そうです 」 「 では帰りたいと本人が一番言えば帰れるわけだ 」 刑事は俺を凝視したまま黙ってしまった。 「 事情聴取が終われば……」 「 終わってないんですか?でも今は参考人、ですよね 」 「 そうです 」 苦々しく伝えられた言葉。 「 本人にその事は、参考人ならいつでも帰れると説明してありますか?」 「 それは……」 「 してないのならすぐしてください。弁護士を呼ぶこともできます。私はここで高光さんを待っています 」 さぁ、どうするか?このハッタリ効くか…… 「 ちょっとお待ちください 」 と言って榛の木刑事は出て行った。

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