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第41話 パールベージュのミニ
夏の扉を叩くのは 41
ー パールベージュのミニ ー
「 朝から味噌汁?え、肉が入ってる!」
「 おお、豚汁だ。1週間に一ぺん多めに作って冷蔵庫に入れてある 」
「 へぇ、冷蔵庫開けたら味噌汁あるって便利だな 」
「 今は即席もあるだろう、スーパーに行かないのか?」
「 うん、スーパーは、あんまり 」
「 お前、どんな生活してるんだ?」
「 コンビニの弁当か、お湯沸かせるからカップラーメンかな 」
「 おい、ひょっとしたら電子レンジもないのか?」
「 うん!」
俺は本当に芯から高光が心配になった。
「 おい、ここに来るか?」
「 え?」
「 ここで住むかって……」
おいおい一体俺は何を言った?今。
言った俺が驚いてるんだから高光にしてみれば尚更だろう。
目を見開いたままで固まる高光。
「 いや、冗談だ……」
と慌てて誤魔化す俺も俺だ。
冗談だと伝えた途端に俯いた高光の髪の下、うなじの焼けていない肌がやけに白いのが目に眩しい。
こいつの肌はこんなに元は白いのか。
肌だけじゃないのかもな……
そんな気持ちがふと心を過ぎる。
それっきり会話は繋がらなくなった。
会社に寄ってから工事現場に向かうという高光をアパートまで送り、そのまま俺は学校まで車を走らせる。
車から降りた時に何か言いたげだった高光だが、学校で会えるだろうと俺も単純にそう思っていたからその場で軽く手を挙げ別れた。
今日は校長が長期の出張から帰ってくるはずだった。
報告する事は山ほどあるな。
林も同席させなきゃならないだろう。
駐車場に着くともう校長のパールベージュでオーダー塗装をしたミニが停められている。
俺は静かにその隣にレンジローバーを着けた。
田上校長は教育畑を生え抜きで上がってきた経歴ではなく、
長い民間経験のある人で懐の深い厚みのある言動をする人間。
朝陽に映えてパールがやけにピカピカと輝いた車体の存在感が本当に有り難く思わず手を合わせて拝みそうになった。
「 またまた、大きな車が。本当に菅山さんは車好きですねぇ 」
校門の方から歩いてくる田上校長はワイシャツの袖は捲り上げ首にタオルを巻き、すっかり外の一仕事終えた格好をしていた。
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