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第42話 田上校長

夏の扉を叩くのは 42 ー 田上校長 ー 「 おはようございます。出張お疲れ様でした。早速見回りですか?」 「 はい、留守の間かなり大変でしたね、菅山さんこそご苦労様です。 いや、朝から不審な人達が学校周りをウロウロしていたものでね、外構をメンテしながら少し観察していました」 「 報道関係者、朝から来てますか?」 「はい、カメラを抱えているのでおそらくそうでしょう。警備の人にも生徒たちとの接触は注意してくださいとお願いしてきました。あの人達も仕事でしょうが生徒たちの個人情報は触れてもらいたくないですからね」 話しながら職員用出入り口から校内に入る。 俺は頭の中に描いていた今日の予定を彼に伝えると、彼は頷き着替えますからと校長室に向かった。 俺は見送りながら林先生を預けている村田先生に連絡を取った。 スーツに着替えた校長が職員室にやってくる。 小柄で愛車のミニの大きさにマッチしてるその姿だが、眼力は強く、オーラーを出さなければならない時には相手に圧力をきちんとかけられる人だ。 徐々に職員室に入ってきた教員たちもその姿を見るとその表情を引き締めた。 村田先生と共にやってきた林先生の様子は諦めたような悟ったような、警察でどんな話をしたのかはわからないが、昨日とは違う顔になっている。 出張中の職員たちへの労いと今回の視察の報告が校長から短く伝えられ朝礼が終わると、村田、林両教員と俺は校長室に入った。 これまでの知った事実をどう話すか前の晩練った報告書を頭の中にもう一度並べて反復する。校長と話す前に予め藤間光の話を聞きたかったが生憎藤間さんからその話を聞く余裕はなかった。 俺たち3人をソファにそれぞれ座らせてデスク前の椅子に腰をかけた田上校長が口火を切る。 「 菅山さんから起こった事件の事は聞きました。 職員室の窓から侵入があったこと。何者かに林さんのデータが盗まれたという疑いがあるが本人の意向で盗難届は出されていないということ。 その後、何者かが報道番組にこの学校で起きたかもしれないことを投稿した結果報道関係者が事実確認に訪れたこと。 あなたが学校の改修工事で出入りしていた人物に脅迫されていたということ。 それで、林さんあなたは具体的に誰に何をしたんですか? その結果、どんな事が起きたのですか? 対象の相手の氏名もしっかりとフルネームでお願いします。 事実に基づいて正直に話してください 」 最初から林教員に向かった田上校長の言は厳しいもので俺の報告書の出番は全くなかった。

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