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第46話 傷害 1

46 ー 傷害 1 ー 二人に近づき、大丈夫か?と声をかけるとそれぞれ注意して見ていないと分からないくらい僅かに頷いた。 この位の怪我ならまぁそんなに慌てる事もないかと判断しながら刑事の方に向き直る。勧められた椅子を断り、 「 ところで、花澤君と藤間君はどういう経緯で怪我を負う事になってのですか?」 と問いかけた俺に、 生徒二人をそれぞれ対面する様に椅子に座らせると刑事が俺たちに事の次第の説明を始める。 今日の朝、9時過ぎに◯の町2丁目のコンビニエンスストアの前。登校するためにその路を通った花澤祐樹君と藤間光君が…… 説明は巧妙に簡略化され細部は隠されていたが刑事達が把握しているシナリオを読み取るのは充分な内容だった。いよいよ怪我を負った際の話になる。 怪我を負わした相手は…… は?高光が、花澤に怪我を負わした? 「 まさか……高光 」 声に出した呟きに刑事が食いついた。 「 高光凌とは?菅山さんご存知なんですか?」 「 なんで呼び捨てなんだ?」 思わず口から飛び出した俺の抗議するような言葉に、 「 本人も花澤祐樹君に殴りかかり怪我を負わせた容疑を認めていますから、藤間君の方はそれを止めに入り手首に怪我を負っています 」 気色ばんで言葉を返す刑事。 その時、俯いて座っていた藤間が何か口の中で呟いた。 『 違う……それ、違 』 え?なに?……藤間今なんて言った? 「 別件でも参考人として呼ばれているということですから、まぁ、色々余罪も取り調べます。しばらく身柄は預かることになると思います 」 「 現行で逮捕、された、ということですか?」 それっきり刑事の口は重くなった。 「 現在、取り調べ中です 」 「 逮捕はまだなんですね 」 俺はその事を確認すると、 刑事は渋々頷いた。 「 それで、先ほどの菅山さんと 」 当然の疑問を再度俺に尋ねかけた刑事に、 「 ちょっと、失礼します 」 と強引に断りを入れて部屋を後にした。 部屋を出る際に、連絡をしなきゃならないところがあるから、と心配かけぬように三枝先生に耳打ちをすると先生はなにもかも承知したように深く頷いた。 俺は一階に駆け降りると、先日から何度も目にした登録番号に電話をかける。 「 もしもし、剣崎です 」 相手の声がスマフォ越しに聞こえてくる。 「 もしもし、菅山だけど 」 と言いながら署外に出る。外は熱中症を心配させるほどの連日の猛暑で短い石の階段を降りると途端にうだるような汗が噴き出す。 「 あー、久しぶりね。 なんかなきゃ私には連絡ないだろうけど、今何処?」 「 悪いな、◯並警察に居る。 頼みたいことがあるんだが 」 「 そりゃそうだわ 」 軽く笑う声と冷静に返す言葉。 「 誰になにがあった?」 俺は思わず言葉に詰まった。 高光の事をなんて言ったらいいんだ? そして更に今頃になって気がついた。 俺は生徒が事件に巻き込まれてるからここに居るんだよな…… 高光の事で来たわけじゃない。 そんな事も分からなくなるほど動揺していた。 高光が警察に留められている、 という現実に。

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