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第48話 傷害 3
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ー 傷害 3 ー
「 藤間君、さっき刑事さんが言っていたことは正しいのか?
君の見たことを話してくれないか?」
俺は彼が先ほど言いかけた言葉の続きを尋ねた。
藤間光は相変わらず俯き拳を握りしめていたが、三枝先生はその手をしっかりと覆うと宥めるように手の甲を優しく撫でる。
「 先に、先に殴りかかったのは花澤祐樹の方なんです……」
続けてというように三枝先生がしっかりとまだ高校生になりたての少年のその小さめの手を摩る。
「 僕と祐樹がコンビニから出ると高光が居て、それで、、、、」
「 それで?」
「 高光がその場に土下座したんだ。
土下座して謝ったんだ。
僕を巻き込まないでくれって言いながら…… 」
高光が謝った?
花澤祐樹に?
「 花澤君と高光さんは知り合いなのか?」
「 うん、昔の僕の家、花澤君の家の近所だったから僕は小さい時から知ってる。
高光は花澤君のお父さんのお店で働いていたこともあるからもっとよく知ってると思う 」
「 花澤君のお父さんのお店で働いていた?」
確か花澤の家は駅前で夜飲食店をしていると聞いたがどんな類の飲食店なんだろうか?
バーか居酒屋か何かなんだろうか……
三枝先生先生に目で問うと先生はまた困った顔をした。
すっと俺の耳元に近づくと、
「 いわゆる……ガールズバーみたいなもので、その男版です 」
ガールズバーの男版?……そこで高光が働いていたのか。
平田に弱みを握られていた高光。そして平田の店で働いていたと言ってたが、花澤の店でも働いていた?
なんだそれは……
それと、藤間の盗撮の件と何か関係があるのか?
俺はこんがらかった事態にますます困惑してくる。
藤間が言えない、聞かない方が良いと言ってた金の使い途ももしかしたらこれに関連してるんだろうか?
「 藤間君、君は本当は林先生に何を頼んだの?」
一番の疑問はここだった。この二人の間のやり取りをはっきりさせないと。
今回の事件の全ての疑問はここから始まっているから。
硬く口を閉ざす藤間光。婦警が興味ありげな顔をしてこちら見ている。
「 暫く席を外していただけませんか?」
と婦警に頼むと、残念そうな顔をしながらも承知して部屋の外に出てくれた。
俺は藤間光の正面にしっかりと腰を下ろすと藤間に語りかけた。
「 本当のことを言ってくれないと、高光さんの、君のお父さんのことも助けられない 」
その言葉にハッと顔を上げ俺を見つめる藤間君の瞳には少しばかり活発な光が戻っていた。
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