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第49話 傷害 4 心の傷
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ー 傷害 4 心の傷 ー
「 俺、おれ……
女子が好きになれない 」
淡々と藤間が重い口を開く。
「 中学の時も、俺がおかしいのかな って、
女子たちは、ボーイズラブとかなんとかって騒いでたけど、
男子の間では、やっぱりそんなのって笑って馬鹿にする奴も多くて。
やっぱり、ああいうのは話だけで実際はそうじゃないのかなって、それで花澤君に相談した事があって……
女子が好きになれないって
そうしたら、店に連れていかれたんだ。
男の人が男の客相手に楽しそうに。
こんなの仕事にしてる奴らだっているんだからって
俺、少し安心して……
それから花澤くんちに良く行くようになったんだ。
お店には色んな人が来てて、それを店の裏方から覗いたりしてた。
そん中に、林先生がいた。
俺まだ中2だったけど花澤君が林先生を見つけて、あの人俺の高校の教員だって 」
俺たちは黙ったまま訥々と藤間が告げる話を聞いていた。その間も三枝先生はしっかりと握った藤間の掌を離すことはなかった。
「 花澤君はお店で働いてる男の人たちとも仲良くて、林先生がどんな風に誘って、ホテルで何をするのかとか……色々話してて 」
そうか、あの体系のバーは風俗店ではないはずだが、表向きはそう偽って、もしかしたらお店の中で客を引くのもやってたのか?
高光も?……嫌な予感が胸を塞ぐ。
「 それで、中二の終わり頃に俺の母親が再婚することになって 」
そして、藤間は又貝のように口を閉ざしてしまった。
「 ちょっと、飲み物買って来ますね、藤間君何がいい?教頭先生は?」
三枝先生が詰まった間合いに休憩を入れるように上手く隙間を空けてくれる。
藤間が小さく、
「 コーラ 」
と呟いたので、
「 あ、俺もコーラがいいや 」
と言うと、
「 じゃあ、買って来ますね 」
と先生は出て行った。
俺は藤間の頭をクシャリとかき回し、
「 お母さんの再婚、ショックだった?高光さんが君の父親だってことは知っていたんだろ?」
と遠慮せずに尋ねた。
微かに頷く藤間は、しばらく俯いていたが不意に顔を上げて俺の方を真っ直ぐに見た。
「 先生はどっちが好きなの? 」
「 え? 」
「 教頭先生は
三枝先生と高光と
どっちが好きなの? 」
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