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第50話 傷害 5 心の傷

50 ー 傷害 5 心の傷 ー 「 それは…… 俺が知りたいよ 」 黙ったまま俺を見ている藤間が、 「 でも、どっちも男、だよ 先生も前から? 俺と、同じ?」 何かを期待している眼差しで更に俺の答えを待つ。 この問いには正直に答えなきゃならない。 「 うん、俺は、 若い頃結婚してた。女性と、 だから昔からって言われると、それは分からん 」 「 へぇ、まだ分かんないの?」 藤間の若い幼い顔がやけにやつれた顔に変わる。 言われてみればそうだ。俺の方が15歳の藤間より全然わかっていない。 この子は一体いつからこの思いを抱えてきたんだろう。 「 なんで、、わかった?」 「 三枝先生の事は生徒の中で噂になってる。去年も一緒に旅行したんでしょ?」 「 それは、夏の講習会が京都で 」 「 高光は、だってわかるよ。最近いつも一緒だし、この間のアパートで会った朝だって、先生の態度でそうかなって 」 そうか、そんなにわかりやすかったのか。 その会話を後に、 また貝のように口を閉ざした藤間に俺はかける言葉を失った。 真夏の太陽が真上にきて建物の中に陽射しが差し込まなくなる。 天井の蛍光灯が灯る部屋の滞った空気に昼間の明かりを入れようと外を見るためでもなくブラインドを上げると、 廊下から婦警の弾むような話し声が聞こえてきた。 「 あら、コーラお好きなんですか?」 「 今時のコーラって色々な種類があるんですね 」 「 そうなんですよ。警官もメタボが多いからみんな気にして、上司の健康指導も結構煩くて 」 婦警と三枝先生が会話をしている。 三枝先生のよく通るハスキーな声を扉越しに聞きながら、高光の事を考える俺。 さっきの問いの答えは俺にもまだ出ていないんだよ、藤間。 君に伝える答えが出るのはいつだろう…… 扉を開けて三枝先生が部屋に入ってくると窓からは望めなかった冷めて爽やかな気が流れ込んできた気がした。

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