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第57話 傷害 12 心の傷
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ー 傷害 12 心の傷 ー
考えられない事をする。
大人は
『 簡単にそんな理由で 』
と口にするが恐らくこの歳のコントロールできない多感な性を、おまけに異性ではない性に向けられる事を悩んでる子には辿り着ける唯一の救いだったのか……
それだったらあまりにも哀しいことだ。
「 それで、林先生に頼んでそのあとどうなっていったんだ?」
黙ったまま光はそばに置いたショルダーバックからスマフォを取り出すとカバーを外して挟んであったデータチップを机の上に置いた。
「 これは?」
頷く光。
そうか林先生が職員室から盗まれたというチップがこれなのか。
「 職員室に侵入したのは君なのか?」
「 光、言わなくていい!」
藤間さんが卓上のチップを取り上げると手で固くそれを握りしめる。
「 どうなんだ?藤間君。この事隠したまま君はこの先を毎日過ごしていけるのか?」
俺の問いに、
「 光、喋るな!」
という藤間さんの尖った声がかぶる。
光はそんな藤間さんを哀しげに一瞥すると静かに言葉をつないだ。
「 林先生に撮影してもらったあと、映像はラインで受け取ったんだ。当然元のデータは消すと言う約束したのに 、
先生は裏切った 」
「 裏切った?」
頷くと、スマフォを操作した光は怪しげなサイトを俺たちの目の前に晒し出した。
「 これは……」
言葉のつながらない藤間さんがうめき声をあげる。
少年と大人の男が絡み合う画像がこれでもかと並べられたサイト。
スクロールして一点で光の指が止まる。
光がスタートをタップすると、
映像は真っ裸の少年が覆面をした体格のいい男に性器を口淫されながら扱かれている姿が喘ぎ声と共に流れていた。
カメラが覆面の男から少年を真下から見上げるアングルに変わる。
その顔はどう見ても今目の前にいる光とそっくりだった。
「 この覆面してるのは?」
冷静になれと憤ってる気持ちを強く押さえ込む。
この体格、そして光の薄い腰に回した手の甲に淡く見える痣。
見覚えがある。
「 林か?」
と聞くと小さく頷いた。
喘ぎ声のするスマフォを手に取り俺は音量を下げた。
「 この先、教えてくれるな 」
その後のことを俺に話す光はもう全く藤間さんの方は見なかった。
花澤には全く言い及ばず全て林と自分の間のことだと話す光。
確かに朝のファミレスで林と会っていたのは光で、林に青褪めた顔をさせていたのも光だった。
でもしっくりこない。じゃあ花澤はどこまで関わってるんだ?
「 藤間君、君の話してくれた事を信じたい。
でも、今回の高光さんの花澤君への傷害の理由には全くなっていないね。
高光さんはどうして君を巻き込むなって花澤君に言ったんだ?
暴力を仕掛けたのは花澤君の方からだったと言ってたよね、花澤君と君と高光さんの間に何があったの?」
ハッとして俺の顔を凝視する光の顔がたわむ……
後はもう言葉もなく彼のすすり泣く音しか答えてくれるものはなかった。
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