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第60話 傷害 15 お節介
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ー 傷害 15 お節介 ー
「 あんな事をするほど、、
光は何を持て余していたんだろうか……
どうして、先生にあんな行為を 」
悔しそうに言う口元には彼の憤りがうかがえる。
それは嫉妬も入っている?
藤間さんの表情と態度は随分と軟化してきた。
さて花澤の店のことを聞いてみるか。
「 花澤君の父親の店、どういう店だが知ってます?」
「 いえ、知りません。花澤という名も初めて聞きますから 」
「 奥さんから聞いたこともない?」
「 妻は昔の話は一切しません。
現在のことでも他人の名前を妻から聞くことは滅多にない 」
「 そうですか、花澤君は昔光君たちが住んでいた団地が一緒で、光君は仲良くしていたと聞きましたが 」
まさか藤間のお母さんの昔の話を俺からするわけにもいかない。
本当に知らないんだと首を横に降る藤間さんの顔を見ながら、高光の事もおそらくあまり聞いてないのかと思うと、高光の居場所が本当にないんだと今更ながら何故か俺が傷つく。
高光のことを頭の片隅にも置いてなさそうな藤間さんにまたイライラすれば言葉も少々きつくなる。
「 あなた、本当に無関心なのか無神経なのか。光君の行動にも心にも関心がなかったってことですか?」
無神経にはムッとしたのか藤間さんが言い返す。
「 仕方がないだろう。光の気持ちを真正面から受け止められるはずがないじゃないか。どうにか父親の姿を見せて早く諦めてくれないかとそればっかりだったよ。
10代のそれも同性に恋情持たれてあんたならどうする?
それも親子の立場で、
あんたなら相手になるのか?」
詰問を返され俺はふっと友人の青木の事を思い出した。
再婚相手の十代の同じ男の性を持つ相手からぶつけられた恋慕を離婚という最悪な形と共に手放すしかできなかったあいつ。
ここに来て初めて素直な言葉で人らしく悩む姿を現した藤間さんを眼の前にし、
あまりにも強情で知らぬ存ぜぬを押し通すなら泰子にぶつけてやるかと意地悪く思っていた俺の気持ちが、
もしかしたら似た者同士、青木が相談相手になるんじゃないか?とそんなお節介な方向にも向いてきた。
「 藤間さん、腹減らないか?」
「 え?」
「 なんか食べに行こう 」
腹なんか減ってない、あんたはもう帰ればいいじゃないかと反抗する藤間さんに、
「 連れて行きたいところがあるんだよ 」
と文句をいう口を閉じさせる。
何か感じ取ったのか一応文句はやめて渋々一緒に来る気になったらしい藤間さんを連れて車に乗る。
繁華街まで車を走らせコインパーキングに止めると俺はトランクからアロハシャツとパナマ帽を取り出した。
「 何をするんだ? 」
と問われて、
「 いや、一応聖職者なんでね、変装 」
とアロハに着替え、丸メガネの暗褐色サングラスを掛けながら返すと彼の顔が強張ったのが真っ黒なレンズ越しに見えた。
ダークスーツにノーネクタイの藤間さんにも一応予備に持っていた
Ray-Banのウェイファーラーを掛けさせる。
路上反対側の店のガラスに二人映った姿。
「 あんた、街のポン引きに引っかかったくそまじめな公務員みたいだな 」
と笑いながら言うと心底嫌な顔をした藤間氏だった。
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