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第61話 傷害 16 凄いお節介
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ー 傷害 16 凄いお節介 ー
路地を入った間口の狭いビルの地下に降りる。看板もろくに出てない店だが記憶が正しけりゃここで間違いはない。
真っ黒なレザーのドア、会員制とプレートの貼り付けられた下のノッカーをコンコンと鳴らすと暫く間があった後、僅かに薄くドアが開いた。
白髪に近いほどのブロンドの髪の毛と薄い茶色の瞳が覗く。
二人だと告げると内開きのドアが開いた。
「 いらっしゃいませ 」
「 しばらくぶり 」
カウンターの中から俺に声をかけたのは艶のある黒髪をオールバックに流したやけに色気のある男だった。
「 よお、覚えてたんだ 」
「 一回みえたお客さんも忘れやしません。ましてあなたには何回も来て貰って 」
微笑みながら話すその男は俺が前職の時良く接待で利用したこのバーのオーナー 通称L(エル)。
「 最後に来たのは五年くらい前でした?」
「 そうだな、今の勤め先に移る前だから 」
不信感もあらわな藤間さんを奥のソファに誘う。
この店の約束事が変わってなければカウンターは出会いの場のはず。
座って藤間さんを見ると所在無さげにソファにも浅く腰掛けている。
「 この店はゲイ専用なんだよ。
男の客とボーイ姿の男しかいないのはご覧の通り 」
そして、カウンターに座る客を見ながら俺は小声で教える。
「 あのカウンターの若い男は相手を探してる 」
え?とばかりに凝視する藤間さんに、
「 初めてか?こういう店は 」
と尋ねると、
熱いおしぼりをひざまづいて手渡しする人気のアイドルに面影がよく似た若いボーイを見つめ、
「 まさか 」
とぶっきらぼうに言うと受け取ったおしぼりで落ち着きなくテーブルを拭く。
そこかしこで肩を抱かれ顔を寄せ合うカップルや会話の合間にキスを交わしているのもいる。
俺は試すように、
「 慣れてるんだ?同性同士のことには 」
とわざと見た藤間さんの様子から感じたことと反対を言うと、
「 慣れちゃいない。そういうこともあると認識してるだけだ 」
と声のトーンが落ちた。
注文したビールを運んできた青年はこれまた韓国のイケメン俳優に良く似た風貌で俺ですらふっと見惚れる始末。
ここいい?とLが俺の隣に腰掛ける。
「 随分若い子が多いね 」
「 ゲイの世界も最近オープンになってはきたけどまだまだ自分の性壁に悩んでる子は多いよ。うちなんかに来る子は大抵カムアウト出来ずにここだけで話し合える友人とか、いい出会いがあれば恋人になれるチャンスが欲しくて口伝えで聞いてやって来る。へんな斡旋にも引っかかることないし、それこそ身体を売るような事にもならないから 」
「 君んとこみたいな店は少ない?」
「 あぁ、多くはないね。大抵は常連の客に強引に付き合わされたり、下手したら脅されて援交?売春?
若い子には危ない誘いが多いですよ 」
「 西◯駅のボーイズバー、
チャ◯◯スって知ってる?」
「 ええ、まぁ結構悪辣で有名な店ですから。うちの出入りの子たちには注意してますよ。ただのボーイズバーじゃないですからね、あそこは 」
藤間さんも駅と店の名前でなんの話なのかわかったようだ。
蒼ざめた顔でLの話を聞いている。
「 風営法に引っかからない形で営業してますけど危ないですね。
未成年が紹介してもらえるからその専門の客が多いらしい。
SNSで連絡先の交換をしてあとは個人でと言う事ですが、未成年を連れて行ける専門のマンションを用意してるって話もあります。あくまでもボーイズバーはネット販売のコンテンツ扱いですね 」
ボーイズバーに集まる客に未成年の子どもが見世物になって売買のコンテンツ扱いになる。
言葉は交わす必要もなくSNSで交渉が成立する。
どこかのマンションの部屋で性交渉が行われるのか……
客の方はバーで姿を晒すから子どもたちにも安心だと説得できる。
花澤っていう男は巧妙なやつだ。
「 そこに、その店に光は行ってたのか 」
「 らしいな、花澤祐樹君と一緒に父親の店に出入りしてたらしい 」
ショックを受けたらしい藤間さん。
俺は残ったビールを飲み干し、
「 藤間さん。ハンバーグの美味い店が近くにある。近江牛100%で店で赤身の肉を挽くんだ。腹が減ったから飯にしよう 」
藤間さんを促して客の出入りが多くなったその地下の店を出た。
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