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第67話 行方
ー 行方 ー
翌朝、直ぐに学校に向かうと工事現場で安堂さんを探す。
俺を見るなりバツの悪そうな顔をした彼に近寄ると、
「 高光、のことですか?」
と先に牽制をしてくる。
「 そうです。彼、仕事辞めたと聞きましたが本当ですか?」
「 うん、まぁそうなるのかな……」
「 そうなるのかなってどういう?」
「 一応、本人と話ができてないんでね。人から辞めるって伝えられたからさ 」
「 今どこにいるのか知ってますか?」
「 菅山さん、
悪いな、今から事務所で打ち合わせがあるんだよ。設計会社の先生が来るからさ。
また…その話、後でいいですか」
完全に話したくない、話せないというような雰囲気がありありと伝わってくる安堂さんにそれ以上詰め寄るわけにもいかず、
「 じゃあ、お昼にまた来ますから必ずいてください 」
と強く言い置いて俺はその場を後にした。
俺の家からいなくなった高光は自分のアパートにも帰っておらず、貸した部屋着も綺麗に畳まれて洗濯機の上に残されていた。
そして、昨日の暑さで汗を吸いすえて汚れた作業着はなくなっていた。
あんなのを着てウロウロしているのかと思うと気が気じゃない。こんな時に不審者で警察に捕まったらどうする気だ!と思った瞬間、剣崎にはまだ連絡していないことに気がついた。
「 剣崎?高光から連絡があったか?」
「 おい、まずはおはようじゃないのか?
高光さん?いや、昨日あんたのところで別れたきりだけど、もしかして居ないのか?」
そうだと深くため息をついた俺の耳元に剣崎の舌打ちをする音が確りと聞こえた。
「 しまったな……」
「 高光に昨日何か言ったのか!」
「 まぁ落ち着いて、あんたが興奮してもしょうがない。心当たりは探ってみたのか?」
「 あぁ、アパートには居ない。現場も昨日仕事を辞めたということになってるらしいから今日は来て居ないし、勤務会社の社長も辞めたのは人からの伝言だからとはっきりしないんだ。俺が昨晩辞めた理由を聞いておけば良かったのに、すっかり頭からそのことが抜け落ちてた 」
「 そうか、菅山さん今から時間が取れるか?」
俺は今日のスケジュールをざっと頭の中に並べてみる。
「 昼前なら 」
「 そうか、それなら学校の近くまで行くから昼前に会おう 」
「 わかった 」
通話を切った俺はもしかしたら光が居場所を知っているかもと三枝先生を捕まえるために急ぎ職員室に戻った。
結局、その方からも何の情報も得られずかえって光に心配をかけただけになってしまった。
イライラしているところにまたテレビのクルー達が校門前でウロウロしているのを発見した俺がそいつらに怒鳴り込み、そこから警察に通報される寸前の大騒動になったのは全く不覚。
おまけに、
止めに入った校長の顎に、テレビクルーが掴みかかった腕を払おうとした俺の拳がヒットして、保健室の先生から貰ったアイスノンで顎を冷やす田上さんを見てやっと冷静になった俺は本当にバカだ。
生徒たちはこのアクシデントに大盛り上がりだし、
昼前にやってきた剣崎にも散々笑われたが俺の頭は高光の行方を知りたいということでもう一杯だった。
「 何が原因なんだ?
たしかに自分のことを責めてたが居なくなるなんて 」
「 泊まったのにあれから話はしなかったのか?」
思わず俺は黙ってしまった。話すも何も身体を貪ることに懸命になって殆ど強引にセックスしたことを話すわけにもいかない。
「 あんた、話もせずに押し倒したのか?」
飲んでた水を俺は盛大に吹いた。
「 やっぱりな 」
「 何で、、わかった 」
「 兄弟親戚でもない、友達とは全く思えない、知人にしては距離が近いし弁護士費用まで持つと言ってるしね。残るのはひとつじゃないか。
高光さんを見てるとあんたと恋人とも思えないから、セフレかなんかなのか?」
「 セフレ?
違う……」じゃあ、なんだ?
「 ふん、まぁいい。それより居場所がわからないと平田氏の累犯の捜査が高光さんにまで及んだときに逃走したと警察に判断されては厄介だ。知ってそうな人は心当たりはないのか?」
「 一人いる。高光の会社の社長で安堂という人。高光の事もよく面倒見てたらしいし、今朝会った時も何か知っている感じはしたんだ 」
「 安堂さん。今も現場に居る?」
「 今朝打ち合わせがあるからと言ってたが、もうそろそろ俺も聞きに行こうと思ってる 」
「 そうか、それなら同行しよう 」
二人で学校のそばの珈琲屋を出ると駐車場から紺色のバンが出て行ったのが見えた。
あれは安堂さんの?
急ぎ現場に行くとやはり彼は打ち合わせが終わると酷く急いで出て行ったという。
「 逃げたのか? 」
と呟く剣崎。
逃げたんだろうか?それとも又高光に何かあったのか?
工事現場に敷かれた熱い鉄板の上で温められた風が肌に粘りつく。
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