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第69話 盆 、
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ー 盆 、ー
梅雨か来なかった夏の暑さはますます地上をヒートアップさせる。
そんな中、盆の休みを前にした8月頭、平田の恐喝事件は変な方向に進展を見せた。
恐喝された被害者の中に花澤の店からのルートじゃない明らかに違う関連の者がいたと剣崎から連絡が来た。
そして今日、事情徴収された中に藤間光の母親がいたという驚くべき話が出た。
「 どういうことだ?」
「 介護施設の関係者からも事情を聴いてるらしい。被害者の中にその介護施設の入居者かあるいは近親者がいたんじゃないかという話だ 」
「 恐喝?理由はなんだ?」
「 売春だ 」
「 売春!!って、誰を相手に 」
「 そこを調べてるんだろ 」
「 なんで平田と関わり合いが 」
「 藤間君のお母さんは元は平田の店で働いてたんだろ?繋がりがもし続いてたら 」
「 そんな…… 」
俺は絶句した。藤間光はこのことを知ったらどうなるのか?
藤間さんはどうするのか
そして、高光は……
まだ行方の知れない高光がどこかでこの話を聞いたらと思うと俺は全身の震えが止まらない。
三枝先生にはこのことを話とかなくてはと連絡すると、驚きながらも、事情徴収ではまだどうなるかわからない、光くんの耳にはまだ入れませんと力強く答えたのがせめてもの救いだった。
絶望的な気分の時に上から俺に下った処分は依願退職の依頼だった。田上さんが粘って収めてくれたという。
退職勧告ではなく依願という形で退職金まで出してくれるらしい。
全く彼には頭が上がらない。
感謝しながらも幸運にも次の教頭の赴任が直ぐに決まり俺は引き継ぎの業務に追われることになった。
次に剣崎から連絡が来たのは、
引き継ぎが済む頃、ちょうど盆を迎え東京から人が少なくなる時期。
「 今晩空いてるか?」
「 あぁ、大丈夫だが、何かわかったのか?」
「 あぁ、色々……それで、、
まぁあってから話す 」
剣崎が焼肉が食べたいという事なので二人ともよく知っているその店で8時に落ち合うことにした。
飲むんだろうから車を駐車場に置きタクシーを呼ぶ。
そう言えばあの焼肉の店、高光を連れてったきりだったなとそんなことをふっと思い出した。高光とはもう一ヶ月近く会っていない。会っていないどころか居る場所もわからない。
気がつくと高光の事を考えてる自分に、離れてから初めて高光への思いがなんだったのかわかった。
なんだって、こんなに鈍いんだ……
店に着くともう剣崎は座ってビールとレバ刺しをつついていた。
「 先にやってる 」
「 早かったな。
ビール! 」
と若いのに声をかけて丸い椅子に座る。
流石の剣崎も焼肉屋の熱気に珍しくスーツの上着を脱いでいた。
「 白いワイシャツ、汚れるぞ 」
と言いながら周りを見回すと以前に高光に声をかけていた金髪の若い男が目に入った。
こいつに聞いてみようか?
そんな事を思いながら肉を頼む剣崎の声を聞いていると、
その金髪の方が俺に寄って来た。
「 あんた、高光と前に来てたよね 」
「 え?そうだが、知ってるのか?会ったの?彼に 」
「 あぁ、ちょっと後で顔貸してよ、頼みたい事あっからさ 」
それだけ言うとまた厨房に入っていってしまう。
焦って中腰になった俺に、
「 まぁ、食べてからゆっくりと顔を貸してやろう、多分…… 」
と剣崎が満足そうにビールの大ジョッキを飲み干した。
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