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第71話 コンビニ
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ー コンビニ ー
1軒目には姿が見えない。
大通り沿いの歩道を焦りながら早足で駆る。4車線の道路の反対側にもコンビニが見えてきた。
駐車場もない小さめの店、大通りの車が途切れたのを見計らい道路を横断する。
煌々と蛍光灯の明るい店内のレジから遠いトイレのマーク貼ってある壁の前によく知った背格好の男が居た。
「 高光!」
ガラス越しに叫ぶがじっとレジの方を伺いながら視線を泳がせている。ポケットに手を入れて何かを動かしてる様子がここからでも見える。
「 何だ?何持ってる?」
「 ナイフだよ、
多分、果物ナイフを買ってたから 」
栄田の言葉に反射的に身体が跳ねる。
「 高光!」
俺は叫びながらコンビニの自動ドアに走った。
高光が動くのが見える。
開いたドアから入りレジと高光との間に立った俺を驚愕して見つめる高光。
ところどころ薄汚れた白っぽいTシャツと紺色の作業服のズボンを履いた男。
肩にかかる髪を一つに結び、やつれた顔はしているが眼には暗い力を帯びていた。
「 高光、何をしてる……
そのポケットの中身をよこせ 」
店員に聞こえないよう小声で檄した俺の耳に高光の歯を食いしばった軋むような不快な音がした。
血相を変えて入ってきた俺たちに店員が気づいて何事かと窓沿いの通路を覗き込む。
剣崎が、
「 高光さんを隠して!」
と小声で叱咤したが、
同時に、
「 ダメだよ!凌さん、やめて!」
という栄田の甲高い声で我に帰った高光。そのポケットに突っ込んでいた手にナイフが光った。
スローモーションのように光るナイフがしっかりと高光の指に握り込まれたの見える。
俺はダメだ!っと叫びながら高光に飛びついた。
あっ!
と店員の叫び声。振り返る何人かの客、そして俺たちと店員の間にその視界を遮るように割り込んだ剣崎の後ろ姿。
大声を上げて店の奥の誰かを呼ぶ声。
店の中は騒然となり、コンビニの中に警報器の音が鳴り響く。
けたたましいのにどこか遠くで聞こえているようなその騒音。俺は腕の中の高光を蹲りながらしっかりと抱きしめた。
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