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第73話 剣崎の秘策
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ー 剣崎の秘策 ー
「 事情を聞くそうだ。二人別々にパトカーに乗って 」
近寄った剣崎が淡々とよく通る声でそう俺たちに告げる。
「 どうすればいい?」
高光を抱えたまま周囲に聞こえないようそう聞く俺に、
「 あんたは喧嘩したと、高光さんと口論になったとそう言えばいい……
原因なんてなんとでもつけてくれ。
高光さんのへの事情聴取はなんとか。なんとかするから 」
と、やはり小声でそう言うなり高光の喉に後ろから腕をかける。
え?
あっという間に高光は床に力なく崩れ落ちた。
高光に剣崎がスリーパーホールドかけた?
何で!と叫びそうになる俺の口に二本の指を当てると、
「 いま、興奮したままで喋られたら困るからな。
このまま病院に行って貰う 」
険しい表情のままとんでもないことを言い出す剣崎。
でも、ここでナイフ所持でコンビニ強盗未遂なんて喋られたら高光は何年も刑務所から出てこれないだろう。
ナイフも剣崎が始末した?
そう気がついた俺は高光のことは剣崎に任せ、自分は精一杯警察に芝居を打つことにした。
「 現役の高校の教頭って言う立場を上手く使えよ 」
「 もうすぐクビになるんだけどな」
と返し高光を剣崎に預けて立ち上がりレジ付近で店員に詰問している警官の方に歩み寄る。
腕の血はもう止まっているようだ。めくりあげたワイシャツを戻したが血糊がついた袖を隠すために上着は腕にかけ直した。
「 すみません!救急車を呼んでください 」
と警官達に声をかける剣崎の声が背後から聞こえる。
レジ付近にいた5.6人の警官が一斉に剣崎の方を見ると、そのうちの2人がそちらへ向かい、残った警官が俺に声をかける。
「 それでは事情をお聞きしたいのでこっちへ来てください 」
と俺は少し先の路側帯に停車しているパトカーの後部座席に乗せられた。
俺だけをパトカーに乗せたまま外で警官たちが話し込んでいる。そのうちサイレンの音と共に救急車が到着するとストレッチャーに乗せられた高光の頭部が見える。
まだ気絶してるんだな、会わない間に伸びた髪に心が疼く。
剣崎が救急隊員と共に後部から乗り込み、やがてサイレンを再び鳴らしながら救急車は去っていった。
俺を一人残して……
「 お待たせしました 」
二人の警官がパトカーに乗り込む。
一人は助手席、もう一人の年配の方は俺の隣に腰掛ける。
「 まず名前、住所ご職業を教えてください 」
タクシーともまた違う、
緊張したアドレナリンのそれなのか独特の匂いのする車内で警察の質問が始まった。
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