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第75話 大問題

75 ー 大問題 ー 連れていかれたのは最寄りの交番だった。 警察署ではないことに肩透かしを食らったが、そのあとは淡々と調書がとられ捺印を押したら放免となるらしい。 高光のことを尋ねると、病院で治療中だと告げられ病院の名前までは教えてもらえなかった。 最後に年配の方の警官から、 相手の気持ちに配慮せずに好意を行動に移すと先はストーカーだと誤解される恐れもあるから。 と有難いアドバイスを受けた。 佐藤君からは親しげに三枝先生によろしくお伝えくださいと伝言され、なんともあっけなく交番を後にする。 全てのことは剣崎が手配したことだろう。 あのコンビニで何をまくしたてていたのかはわからないがただの痴話喧嘩に持って行ったのなら相当な策略家だな…… コンビニ店員から高光を隠せと言ったのは、高光がナイフを持っていることを明るみにしないためか。 それに栄田君はどうしたんだろう? 交番から適当に大通りを目指して歩きながら剣崎に連絡をしようとワイシャツのポケットのスマフォを手に取ると、前から近づく人物に驚く。 「 栄田君!どうしたんだ 」 「 あーすみません。逃げ出したと思ったっすよね 」 「 いや、気がついたら居ないから驚いたけどね 」 「 あの後店員が警報鳴らして、剣崎さんが落ちたナイフを掴んで俺にこれ持ってコンビニから出ろって、それで店内が騒いでる間に俺、外に出たんです 」 「 あぁ、だからナイフがなかったんだ 」 「 そうっす。あの通りの向こうは川なんで、俺川まで行ってナイフ捨てて、コンビニの外で待ってたらパトカーがぞろぞろやってきて野次馬も増えて、それで店内から出てきた剣崎さんからあんたの後をつけといてくれって頼まれて 」 「 交番にまでついてきたんだ 」 「 まぁこの交番あのコンビニから近いっすから。 大丈夫だったんっすね 」 「 そう、ナイフと血糊がなかったおかげだよな…… つくづく剣崎が一緒で良かったよ 」 栄田君もホッとしたような口元を綻ばせると、 「 病院、どうします?行きます?」 「 知ってるのか?」 「 剣崎さんから連絡貰いましたから 」 「 全く剣崎はいつのまに栄田君の連絡先まで抑えたんだ?」 「 タクシー降りた時に名刺渡されて直ぐかけてくれって頼まれたんですよ、それで俺直ぐにかけて 」 なるほど、高光に会うことで頭がいっぱいの俺はそんなやりとりも耳に入らなかったんだな。 「 さぁ、悪いけど病院まで連れてってくれ 」 俺たちはタクシーを拾うために大通りに向かった。 気がついた高光を剣崎はなんて説得するのか。 そうだよ、俺は高光に伝えなきゃならないことがある。 「 高光に平田のことを吹き込んだのは栄田君も知ってる人物か?」 「 うーん、凌さんがあの仕事してる時の同僚なんすけど、俺はあんまり知らない人っすね。 相変わらずやばい仕事やってるとは聞いてますけど 」 「 やばいってどんな?」 俺が小声で聴くと栄田君も顔を寄せ囁いた。 「 女の子斡旋してるんすよ、金持ってる年寄りとかに、美人局って言うのか、金持ちの年寄りに女の子抱かせて後で恐喝するって 」 「 それって 」 「 夕方のニュースでやってたあれっすよ 」 「 夕方のニュース? 」 「 介護施設で売春容疑って 」 途中から普通の声の大きさで会話してたのが聞こえたらしく運転手まで会話に入ってきた。 「 あぁ、あれ。 すごいよねぇ、ボケちゃった年寄りに未成年の女の子紹介して、あれ介護してる方の女性も関わってたって、介護施設の給料も安いからねぇ 」 もしかして、光の母親の勤め先か? 「 それどこの施設がニュースに?」 「 あの目白通り沿いの◯◯の園ですよ、あの結構お金持ってないと入れないって、高級な、いくらだったかな、 そうそう入居費一人2000万とかの、払えるから凄いよなぁ」 ニュースになった……ってことは藤間さんたちはもう知ってるって事か? 三枝先生に連絡しないとならない、光は知ったのか?どうしてるかを聞かないと…… 藤間さんにも連絡取らないと。 俺は更に起きた大問題に頭を抱えた。

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