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第51話

「冬愛くん、ごめんね。機嫌直して?」 「……」 眉をハの字にして、冬愛の反応をうかがいながら七海が話しかけるが、彼は無言でご飯を食べ続ける。 場所は変わってリビング。シャワーを浴び終えた二人は、食事をとるためにぞれぞの席についていたのだった。 先程の行為で意識が戻った冬愛は、久々に七海に意地悪なことをされたこに対し少しだけ腹をたてており、口を紡いでいた。 七海と身体を交える行為が嫌なわけではないし、攻めてくる七海は、普段とはまた違った顔なので、むしろ好きなほうかもしれない。 ただ、今日は朝から七海のことで心が揺れ動いてばかりで、彼にも上手く扱われて、自分の恥ずかしい所を沢山見せてしまったと感じ、どうしても許せずにいたのだった。 「とーあくん。冬愛くん~」 必死に彼の名前を呼び続けるが、一向に反応してもらえず、七海は分かりやすく落ち込む。 その姿がちょっとだけ可愛く見え、思わず冬愛は笑ってしまった。 「……くくっ。……っはは」 「っ! 冬愛くん、許してくれたの?」 「許したっていうより……なんかバカらしくなったので、もういいです。ただ……当分は、ああいう意地悪しないでください。……俺の心臓も、もたないし」 「わかった。しばらくの間は……優しく抱くね」 「!! そういう意味じゃないです! 変なことばかり言ってないで、七海さんもご飯たべてください」 照れ隠しをするように、違う話題を振ってごまかす。 「ふふっ。冬愛くん、トマト見たいに真っ赤で可愛い。……あ。そういえばこの夫婦茶碗、凄くいいね。冬愛くん、ありがとう」 冬愛が買って来た茶碗を左手で持ちながら、お礼の言葉を口にする七海に、彼は自分の素直な気持ちを伝える。 「うちの両親、お揃いのものが好きだったみたいで。父さんが死んだあとも、母さんはいつもこの指輪と一緒に、父さんとの思い出の詰まったお揃いの品を見ながら、笑顔で過ごしてたんですよ。それを思い出して……俺はこうして七海さんと一緒にいるけど、それでももっと沢山の思い出が欲しいって思っちゃったんです」
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