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第3話

「先生、今日はお仕事ないの? ご飯食べたらアビーに魔法教えてー!」 「アビー、その前にジェームズに謝りなさい。好き勝手に落とし穴作っちゃいけないって、前にも言っただろう?」 「えー……? でも先生もいっぱい魔法使ってるじゃない」  リデルは、この辺りでは有名な魔法使いである。  訪ねてくる人にまじないをかけてあげたり、里に下りて特別に調合した薬を分けてあげたりしていた。もちろん、中にはリデルにしか扱えない危険な魔法もある。  当然リデルは魔法使いの掟に従って魔法を使っているのだが、その辺りの事情をよく知らないアビーには、自由気ままに魔法を使っているように見えるようだ。  リデルはアビーの目線までしゃがみ、言った。 「私は悪戯のために魔法は使わないよ。魔法で悪戯するなんてとんでもないことなんだ。アビーが作った落とし穴でジェームズが怪我したら、私はとても悲しい」 「悲しいの? 先生はジェームズの味方なの?」 「私はいい子の味方かな。アビーが私の言いつけを守ってくれなかったら悲しいし、ジェームズが怪我をするのも悲しい。そもそも私は、アビーに『魔法を使っていい』なんて言ってないよ? 師匠の許可なしに勝手に魔法を使うのはいけないことだからね。今度アビーが魔法で落とし穴を作ったら、私はもっと悲しくなってしまう」 「…………」  リデルに真っ直ぐ見つめられ、アビーはそっと目を伏せた。そして小さく呟いた。 「……じゃあ、もう落とし穴は作らない。先生を悲しくしたくない」 「うん、わかってくれればいいよ。いい子だね、アビー」  そう頭を撫でて立ち上がり、リデルはこちらに向き直った。 「さて、そろそろご飯にしようか。スープはまだ残っているかな?」 「あ、はい。ちょっと待っててくださいよ」 「ジェームズ、早くご飯ご飯~!」 「うるせぇよアビー。お前のせいでメシが遅れたんだろうが。……ったく」  ツッコんでも無駄なので、ジェームズは汚れたエプロンを外してキッチンに戻った。

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