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第11話(リデル目線)
(すっかり遅くなってしまった……)
リデルは荷物をまとめ、自分の家に帰るべく山道を歩いていた。
もう日は傾きかけている。あの青年と話し込んでいたら、時間が経つのを忘れてしまった。
話せば話すほど、ジェームズに似ていた。真っ直ぐな瞳も、強い意志も、初々しい感情も、リデルにとっては好ましいものばかりだった。だから彼と別れた瞬間、猛烈にジェームズに会いたくなってしまった。
きっと彼は今頃、美味しい夕食を用意して待っているに違いない。いや、その前に「魔法使いにしてください」と迫られるだろうけれど……。
ところが、あと数百メートルで家に着くはずのところで、子供のすすり泣きが聞こえて来た。
おや、と思って茂みに目を向けたら、突然赤いワンピースを着た小さな女の子が飛び出して来た。
「うわあぁぁん! せんせぇぇ!」
「!? アビー!? 何故そんなところに!?」
「せんせぇ、遅いよぉぉ! なんでもっと早く帰って来てくれなかったのぉぉ! うわあぁん!」
「ご、ごめん……。でも一体どうしたんだ!? 何があったんだ!?」
するとアビーは、すすり泣きながら教えてくれた。
「おうちが急に火事になって……一緒に逃げたのに、ジェームズ、忘れ物したって……すぐ戻るって言ったのに、戻って来なくて……アビー、言うこと聞いて待ってたのに……ジェームズが……」
「ジェームズ……!?」
まさか火事になった家に戻ったのか!?
一気に青ざめ、リデルはアビーの手を掴んで家への道を走った。
だが、本来家があるべき場所には家らしきものはなかった。焼け焦げた木材は黒炭になって積み上がり、細い煙を撒き散らしながらぶすぶす音を立てていた。時折火花がパチッと弾け、薄暗い大気に消えていく。
(……あの人の仕業か)
リデルをずっと睨んでいたあの村人。一年前に妻と娘を助けられなかったことを逆恨みし、リデルの家に火をつけたのだ。
そして結果的にジェームズを焼き殺した……。
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