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第13話

「なに、今日も死んでるわけ?」  同期の真木村陽(まきむらよう)、大きな眼鏡をずらして朝食の分厚いサンドイッチを食べながら俺の机に置かれた弁当箱をいじくった。 「えっ、これ弁当だよな? 冬馬、愛妻いたっけお前」 「そんなものはいないよ」 「だってお前が料理始めたなんて聞いてないぜ? そもそもお前が食事してるとこなんてみたことないし」  そうして真木村が周りの社員におれの弁当を見せようとするため、慌てて必死に取り上げた。 「だから、女なんていないっての!」  嘘ではない、それは率直に女ではないというだけの話。  そんな一連の騒ぎを、遠巻きに見ていた男がいた。 「瀬戸、いいか? ちょっと話がある」 「……はい」  銅屋仁、にこやかな顔をして今日もその目は笑っていなくて。  ◇ 「愛妻弁当ねえ……本当?」 「違います、真木村の冗談ですよ」  けれど銅屋はおれを許さずにくちびるを大きな手でわしづかみにする。 「このくちびるに私以外のものが触れただなんて許さない」 「……やめてくださ……」 「汚らわしいな、清めてやるよ」  悪夢のように繰り返す、今日もまた望んでもいない男に押し倒されて。ぎゅっと目を閉じて覚悟した、そのときだった。  突然バケツの水が銅屋にかかる。 「……な」 「あっ! すみませーん、手が滑っちゃいましたぁ」  一人の清掃員が慌てて駆け寄ってくる、手が滑ったにしてはびしょ濡れなのは銅屋だけで。 「あ……」  激怒する銅屋から目を移せば、そこにいたのは知っている顔。 「初めましてー、新人清掃員の箕野屋です。この仕事初めてなんで大目に見てくださーい!」  青い清掃服を身に纏った箕野屋晴翔、間違いなかった。

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