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第3話
「……なに、これ……」
中にあったのは、数枚の写真。
それは、セミロングの女性がシャツの前を開けさせ、胸を露わにした姿であった。
その表情は、妖艶なものから穏やかで自然なものまで……
「………」
写真を持つ手が震える。
その指先が冷え、どんどん感覚を失っていく…
……これが、仕事……?
大地はいつも、こんな仕事を……?
それとも……
ズキン、と胸の奥が痛む。
心がガラスの様に砕け
そこから生まれた悲しみの渦に
先程の怒りと嫉妬の様なものが織り重なっていく。
最近僕に構ってくれないのは
……そういう事、だったの…?
胸を抉られたようにズキズキと痛む。
悪い方へ考えが進んでしまうと、もうそれは止められない……
仕事だって言って、嘘ついて
……本当は……この人と…
指先から写真が滑り落ちる。
そして、ぱさりと音を立ててテーブルの上に散らばった。
「……ばか…」
大地の事なんか
もう、知らないんだから…!
落ちた写真をそのままに
僕は大地の部屋から飛び出した。
*
少しずつ陽が傾き
空や雲を茜色に染めていく…
それを花火会場から遠い、神社の境内からずっと眺めていた。
……今頃大地は……
何処かであの女性と………
考えたくないのに。
写真の女性と大地が寄り添って
花火を眺めている姿を、ふと想像してしまう。
蝉の鳴き声と共に、蜩の鳴き声が辺りを包む。
次第に陽が落ち、暮れなずみ
気が付けば、僕の浴衣の柄がわからなくなる程の闇に包まれていた。
「……おまたせ」
その時。階段近くの石畳に腰を下ろす僕に、人影が差す。
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