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第4話
「誘ってくれて嬉しいよ」
その影は、幼馴染みの昴生だった。
提灯ひとつないこの暗闇の中でも、涼しげで凜とした顔立ちなのがわかる。
「……浴衣、似合ってるね」
そう言いながら、昴生が僕の右隣に腰を下ろす。
「もしかして、俺の為に着てくれたとか?」
「……ば、ばか」
口を尖らせて視線を外すと、昴生が笑顔を浮かべた。
「……花火大会の日も仕事なんて。彼女、忙しいんだね」
「……」
「玲央…?」
首を傾げ、切れ長で二重の瞳が僕を捕らえた。
その左目の下、頬骨辺りにある小さな黒子は、この闇の中では殆ど見えない。
「……なんかね……他に付き合ってる人が、いるみたい……」
「どういう事?」
「最近、あんまり会えないし
……キ、キスも、してくれなくて……」
辺りが暗いせいなのか。
普段昴生には言わないような内容まで話してしまっている事に、後になってから気付いて焦る。
「……ふぅん」
そう言って僕から視線を外した昴生は、持っていたビニール袋からペットボトルを取り出した。
「ほら」
「……ひゃ、っ!」
それを頬に押し当てられ、変な声が出てしまう……
「ははは」
「……昴生の、ばか」
声を出して笑う昴生の手からそれを奪い、飲み口を開ける。
そしてそれを飲もうとして、昴生の端正な横顔をチラリと覗き見た。
「……」
それは、三カ月前──
密かに昴生に想いを寄せていた僕は、誘われてついて行った写真展で大地と出会った。
モデルにならないかと声を掛けられて……昴生には内緒で、引き受けた。
……それから、大地に色んな写真を撮られていくうちに、僕は──
「……ん?」
僕の視線に気付いた昴生が、僕の方をチラリと見る。
その流し目に、不覚にもドキッとさせられしまい……慌てて視線を逸らす。
「玲央、……今まで撮ったお前の写真、見る?」
「……え……」
それは、ユーレイ部員でもある写真部の昴生が、事ある毎にスマホで僕を撮ったものだった。
今まで僕が見せてと言っても、絶対に見せてくれなかったのに。
「……み、見せたいなら、……見てあげても、いいよ」
「……はいはい」
ポケットからスマホを取り出し指先で操作した後、昴生は僕の前に画面を寄越す。
と同時に、肩に触れる程に昴生が身を寄せ、光の放つその画面を一緒に覗き込んだ。
弁当を食べている姿や、教室の席に座って窓の外を眺めている姿など、日常のひとコマを切り取ったものばかり。
「……これなんか、俺は好きなんだけどね」
画面をスライドさせた昴生の唇が、綺麗な弧を描く。
「……え、」
それは──
教室で、体操着を脱いでいる瞬間のものだった。
クロスさせた腕。
背筋を伸ばし胸の高さまで裾を捲り上げ、肌が露わになった僕が、斜め後ろから写されていた。
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