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かわいいって、なんですか?

美月(みつき)side】 足のうら、ふかふかする。 きれいな、おうち。 よごしちゃったら、どおしよう・・・。 やさしいこえの人は、ぼくはよごれてないって言ってくれるけど、見えないよごれがいっぱいついてるかもしれない。 ちょっとしかふまないよおに、つまさきであるかなきゃ・・・。 「なんだ美月、そんな変な歩き方したら転ぶぞ。普通に歩いていいから」 でも・・・。 ぼくが見あげたら、やさしいこえの人がわらった。 わらったかおも、やさしい。 「カーペットが苦手なのか?」 かーぺっと・・・このふかふかしたゆかのこと、かな。 にがて、じゃなくて、よごさないようにしてるだけ。 かーぺっと、ほんとはあるくのきもちい。 でも、よごしちゃだめだから、いっぱいふまないよおにしてる。 あ、そおだ。 「・・・ぁ、あの」 「ん?」 「な、まぇ・・・なんて・・・」 なまえ、きこうとして、やっぱりだめだったかもとおもって、言うのをやめた。 だってぼくは、やさしいこえの人のなまえ、よんじゃだめかもしれない。 おかあさんをよぶと、うるさいって言っておこられたから。 やさしいこえの人には、おこってほしくない。 「麗彪(よしとら)」 「ふぇ?」 いま、なまえ言ったの? よしとら・・・よしとら、さん。 やさしいこえの人のなまえ。 よしとらさん。 ・・・かっこいいなまえ! とらって、ずかんで見たトラと同じかな? ぼくが、ほぁーっとなって、よしとらさんを見あげてたら、よしとらさんがまたわらった。 「お前ほんと可愛いな」 「かわい・・・?」 おまえほんとかわいいな・・・って? おまえ・・・ぼくのこと。 ほんと・・・ほんとうってこと。 かわいい・・・って? ぼくはほんとうに・・・なあに? どおしよう、言われたことはちゃんとやりなさいって、おかあさんに言われたのに。 だから、人が言ったことは、ぜんぶ、ちゃんときいてなきゃいけないのに。 ちゃんときいてたけど、ことばのいみが分からない。 どおしよう、どおしよう、どおしよう。 「・・・ごめ、んなさい」 かわいいも分からなくてごめんなさい。 ばかでごめんなさい。 あ、もしかして、「かわいい」は「ばか」っていみなのかな。 じゃあ、ごめんなさい、って言うのであってたかな。 「美月、可愛いって言われて謝ることないだろ・・・」 「ぅ、ごめん、なさい・・・ぼく、ばかで、ごめんなさぃ・・・」 ごめんなさい、じゃなかったんだ。 どおしよう、どおしよう、どおしよう。 「美月は馬鹿じゃないだろ。時任(ときとう)が言った事もちゃんと聞き取ってたし。美月は知らないだけだ。知らない事があったら俺に聞けば、何でも教えてやる」 おしえて、くれるの? しらないこと、きいてもいいの? おこられないの? じゃあ・・・きいても、いいですか・・・。 「ぁ・・・ぁの、かわいい、って、なんですか?」 「・・・そう来たか」 よしとらさんが、こまったかおをした。 やっぱり、きいちゃだめ、だったのかな・・・。 「可愛いってのは・・・美月みたいな・・・子猫とか・・・美月みたいな・・・いや、ちゃんと調べて後で教えてやる」 「はい」 ちゃんと、おしえてくれるって。 かわいいって、むずかしいことば、なのかな。 おしえてもらったら、ちゃんと1かいでおぼえなきゃって、おもった。

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