8 / 70

ことばのいみ

美月(みつき)side】 ここあをのみおわって、ときとうさんが、おかわり、をくれた。 すごい、こんなにあまくておいしいここあ、もっとのんでいいなんて! よしとらさんが、ぜんぶぼくのだって言ってた。 ぼく、ぜんぶなんて、もらったことない。 はじめての、ぜんぶ。 「んく・・・ん・・・ふぁー・・・」 あったかくて、おいしい。 ぜんぶ、うれしい。 でも・・・。 「・・・ぁの・・・よしとらさん・・・」 「なんだ?」 どおしよう、こんなこと言ったら、よしとらさんがいやなきぶんになるかな・・・。 よしとらさんは、おこらないし、ぶたないけど、こんなこと言ったらこまらせちゃう、かな・・・。 「・・・ぇと・・・ごめんなさい」 「美月は何も悪い事してない」 「で、でも・・・ここあ・・・ごめんなさぃ・・・」 よしとらさん、ぼくのことじっと見て、なんにも言わない。 かおは、おこってなくて、わらってる。 ぼくがなんて言うか、まってるみたい。 言わなきゃ、ちゃんと言わなきゃ。 「も、もぉ・・・ぉ、おなか、いっぱい・・・に、なっちゃって・・・ここあ、のこしちゃうの・・・ごめん、なさい」 「そうか。ちゃんと言えて偉かったな。また飲みたくなったら言うんだぞ。今度は俺が淹れてやるからな」 ちゃんと言えて、えらかった? ぼく、せっかくもらったここあ、のこしちゃうのに? お母さんにもらったごはんもお水も、のこしたりしたらぶたれるのに? どおして? 「ど・・・して・・・」 「うん?」 ここあがはんぶん、入ったままのコップ。 よしとらさんがぼくからそおっととって、ときとうさんにわたした。 ときとうさんも、おこらない。 せっかくもってきてくれたの、のこしちゃったのに。 「どぉして、おこらない、の・・・」 「美月が良い子だから。残してごめんなさいって、ちゃんと謝っただろ」 イイコ? ぼく、イイコ? はじめて、イイコって、言われた。 「・・・うれしい」 「──っ!」 あれ、よしとらさん、どおしてびっくりしてるんだろ。 ぼく、なにか、へん? 「よしとら、さん?」 「美月は、天使なのか?」 「てんし?」 てんし、ってなんだろ。 「てんし、ってな・・・」 「悪かった、今のは俺の独り言だから忘れてくれ」 「ぅ、はい・・・」 はい、って言ったけど、ほんとはしりたかった。 よしとらさんが言った、ことばのいみ。 よしとらさんが、ぼくのこと、なんて言ったのか。 よしとらさんが、ぼくのこと、どんなふうにおもってるか。 ・・・あとで、ときとうさんに、きいてみようかな。

ともだちにシェアしよう!