15 / 70
握る手
【麗彪 side】
小さな泣き声で目が覚めた。
時計を見ると午前4時。
「美月?」
「・・・ひ・・・ぅ・・・っ、・・・め・・・なさ・・・っ」
俺の隣で、小さな身体を更に小さく丸めて眠る美月。
悪夢に魘 されているのは一目瞭然だった。
恐らく、オカアサン絡み。
くそ、美月の夢にまで出やがって、2度と出られなくなる様に細かく刻んでから焼いて詰めて沈めて・・・いやいや、今は美月の事だけ考えろ俺。
「美月・・・大丈夫だ。俺がいる」
起こさない様にそっと抱き上げ、仰向けになった自分の腹の上に。
その上から羽毛布団を掛け直し、小さな背中を静かに摩る。
「まだ早い、もう少し寝てろ。起きたら飯食って、一緒に絵本買いに行こうな」
苦しそうに強張 っていた身体が、少しずつ落ち着いていき、静かな寝息に変わる。
・・・良かった。
「美月は、どんな絵本が好きなんだろうな」
絵本でも、オモチャでも服でもお菓子でも、美月が欲しがる物は片っ端から買ってやる。
どんな顔をするだろう。
朝が来るのがこんなに楽しみなのは、ガキの頃以来じゃないか。
腹の上の美月を見ると、また控え目に、俺のTシャツの端を握っている。
・・・可愛い。
その小さな手を見ながら、俺もまた、穏やかな眠りに落ちていった。
ともだちにシェアしよう!