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ごあいさつ
【美月 side】
「ふりそでって、なんですか?」
クリスマスのあと、麗彪 さんも駿河 さんも時任 さんもいそがしくて、お家にいない時間が長かった。
さみしかったけど、麗彪さんのおよう服きてとらきちと寝たり、カンナさんと遊んだり、片桐 さんとお料理したりしておるすばんしてた。
麗彪さんたちは、ねんまつだからいそがしかったんだって。
年末も辞書で調べた。
一年の終わり、だって。
12月31日が大晦日、1月1日を元旦、それからお正月ってゆうのも、おしえてもらった。
大晦日はおそばを食べて、元旦には新年のごあいさつ、するんだって。
「振袖はねぇ、綺麗な着物の事だよ~。新年のご挨拶の時、着て欲しいんだよね~。美月くんに絶対似合うと思って反物から選んで仕立ててもらったんだ~」
「きれいな、きもの・・・?」
「えぇと・・・日本のお姫様の服だよ~」
「着ます!」
日本のお姫さまって、どんなだろお?
麗彪さん、ふりそで、好きかなぁ。
「おい駿河、美月に無理強いすんじゃね・・・」
「麗彪さん、ふりそで、好き?」
「振袖着た美月が好きだ」
「ふりそで着たい!」
元旦は、ふりそでで、新年のごあいさつ。
新年のごあいさつって、なにするのかな。
「麗彪さんの実家で、明けましておめでとうございますって、お正月の挨拶をするんですよ・・・って、美月くん、ついに榊 家へ行くんですね・・・」
駿河さんがこまった時みたいな顔してる。
どおして?
さかきけ・・・が、麗彪さんの、じっか・・・?
「じっかって、なんですか?」
「麗彪さんが生まれて大人になるまで住んでた家だよ~。そういえば、雅彪 さんにはSkypeでモニター越しに会わせるんじゃなかったんですか?」
すかいぷ・・・もにたーごし・・・?
「行かねえ選択はできねえし、美月を置いては行けねえし、正月の挨拶でさらっと会わせたら俺の部屋に匿 って、ついでに養子縁組の話もする」
「面倒な事務処理を雅彪さんに押し付ける気ですね」
頭の上で麗彪さんと駿河さんがむずかしいおはなし、してる。
あとで辞書で調べればいいから、おはなしのじゃまはしないよおにしなくちゃ。
「美月」
「なあに?」
「俺の親父に会っても、美月は挨拶以外しなくていいからな。親父とは話さなくていいし、絶対に付いて行くな」
「ぅ、うん・・・」
麗彪さんの、おやじ・・・?
辞書で調べてみよ・・・。
「父親を親しんで言う語・・・ちちおやって・・・おとうさん?」
「ああ」
「麗彪さんの・・・おとうさん・・・」
どおして、おはなししちゃ、だめなのかな。
ぼくが、ばかだから、かな・・・。
「美月、俺の親父がおいでって言ったら、どうする?」
「ぇっと・・・行き・・・ます・・・?」
「だめだ、絶対近付くな。どんなに優しく話しかけられても応えるな。あと俺から離れるな。捕まったらどうなるか想像もしたくねぇ」
つ、つかま、る・・・?
ぇ、それって、こわいこと、だよね?
麗彪さんのおとうさんって、どんな人なんだろ・・・。
ぼく、ちゃんとごあいさつ、できるかな・・・。
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