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カメラ
【麗彪 side】
朝飯を食ってから、美月 を連れて大型ショッピングモールへ買い物に来た。
運転手兼荷物持ちとして時任 が一緒だ。
駿河 は仕事で、昼頃には合流出来るらしい。
別に、居なくても良いんだが。
「ぁ、あの、それ、ぜんぶ、買っちゃう・・・ですか?」
「ああ。美月が興味持った本は全部な」
「ぅ・・・ご、ごめんなさぃ・・・」
取り敢えず本屋に来て、美月が手に取ろうとして躊躇 って、何故か結局やめた本を片っ端から俺と時任で拾っていった。
絵本や図鑑、クイズの本・・・まだ20冊程度だ。
駿河が昨夜注文した美月専用本棚を埋めるにはまだまだ足りない。
「美月、自分が悪くない時は謝るな。じゃあ、今回はこれだけにして、また次来た時に新しいの買おうな」
「は、はいっ」
申し訳なさそうに俯いていた美月だったが、レジで会計を済ませ、店員が紙袋に丁寧に本を詰めるのを見て、キラキラの笑顔だったのはマジで写真に撮りたかった。
時任が本を車に置きに行っている間、斜向かいの雑貨屋に入る。
食器やらインテリアやら、カラフルな商品がずらりと並び、それを見た美月のふわーっとした顔はすかさず携帯のカメラで撮った。
シャッター音に気付いた美月が、俺の方を見て小首を傾げる。
撮る。
「なんの、おと?」
「カメラで写真撮った。ほら」
正直に撮影した事実を報告した。
液晶に映る自分の姿に驚き、思わず画面にタッチしてしまう美月。
触れた辺りがアップになり、また驚く。
「ゎ、わっ、ごめんなさ・・・っ」
「いや、この場合、謝んのは俺の方だから」
勝手に写真を撮ってしまったのは悪かった。
だが画像は保存する。
「・・・ぁの、ぼく・・・」
美月が、何か言い辛そうに俯く。
・・・頼む、消せとか言わないでくれ。
「・・・ぼく、しゃしん、はじめて・・・」
そんな馬鹿な・・・。
こんなに可愛過ぎる美月を撮らずして一体何を撮る為のカメラなのか。
そうか、オカアサンはカメラを持っていなかったんだな。
「あー・・・あのな、美月、その・・・本当に初めての写真は、これじゃないんだ」
「え?」
変態だと罵られても構わない。
美月を初めて撮ったという事実だけで頑張れる気がする。
「昨夜、寝てるとこ撮ったんだ。勝手に・・・悪かった」
既に待ち受けに設定してある天使の寝顔。
美月に液晶画面を見せると、大きな目を更に大きくしていた。
「・・・これ、ぼく・・・ひとりで、ねてる・・・?」
「ああ。撮ってから俺も一緒に寝たんだ。・・・嫌だったか?」
勝手に写真を撮られる事と、一緒のベッドで眠る事。
どっちも嫌だと言われたとしても、この待ち受けがあるからきっと耐えられる。
「いやだった?なにが、ですか?」
「勝手に写真撮る事とか、同じベッドで眠る事とか」
なんならここで美月専用のベッドを買って帰ってもいい。
だから待ち受けだけは消せと言わないでくれ。
「なんにも、やじゃないです。よしとらさんと、いっしょにねてたのになって、おもったから。よしとらさんと、いっしょにねたの、ゆめじゃなかったのにって。・・・あの、ぼくも、よしとらさんのしゃしん、とりたいっ」
なんにもやじゃない。
やっぱり美月は天使だ。
感動しながら、カメラモードにした携帯を美月に渡す。
「ここ触ると撮れる」
「はい・・・よしとらさん、とっていい?」
「美月ならいいぞ」
「あっ、とれたっ!見てっ!かっこいいのっ!」
カッコいいって俺がか?
それともカメラの機能が?
どちらにしろ、嬉しそうにはしゃぐ美月が可愛くて、美月の為に高性能カメラ搭載の携帯をもう1台買って帰ろうと決めた。
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