60 / 70
ぱぱ
【美月 side】
「ここが・・・麗彪 さんの・・・じっか・・・」
おっきなおうち。
ひろーいお庭。
車ようのおうちもあって、いっぱいカッコイイ車があった。
くつをぬぐとこも広くて、いっぱい人がいて、おじぎしてた。
みんな、お帰りなさいって言ってたみたいだけど、麗彪さんは、おう、って言っただけだった。
ちゃんと、ただいまって、言わないの?
「美月、手ぇ放すなよ」
「うん」
車からおりて、ずっと麗彪さんと手をつないでる。
おうち出る時も、車からおりる前にも、手ははなしちゃだめって、約束したから。
ぼく、駿河 さんにふりそできせてもらったけど、ちょっと歩きにくいの。
でも、ちゃんと、転ばないよおに麗彪さんが手をつないでてくれるから、だいじょおぶ。
ふりそでは、うすもも色で、下の方に金色のお花がかいてある。
ししゅうってゆうんだって。
あと、おなかにぐるぐるまいて、時任 さんがうしろでちょうちょみたいにしてくれたのが、おび。
おびも、ししゅうがいっぱいしてある。
金色と銀色の、おおぎ、だって。
扇・・・あおいで風を出す折りたたみ式の道具、儀式、舞などにも手に持つ、せんす、すえひろ。
じしょで調べたけど、ちょっとむずかしくて麗彪さんに聞いたら、なつになったら使うんだって。
「支度は出来てるそうです。挨拶済んでから、麗彪さんの部屋に行きましょう」
「ああ。美月、これから親父に挨拶に行くけど、なんて言うか覚えてるか?」
「あけまして、おめでとうございます!」
ちゃんと、おぼえてます!
あと、ほかにはしゃべっちゃだめってことと、おいでって言われても、行っちゃだめってことも。
麗彪さんのおとうさん、まさとらさん。
そんなに、こわい人なのかなぁ・・・。
「親父、明けましておめでとうございます」
「おめでとう。やあっと連れてきたか。美月ちゃんだっけ?」
「ぁっ、あけまして、おめでとうございますっ」
麗彪さんの横に座って、おじぎして、ごあいさつして、どきどきしながら麗彪さんのおとうさんを見た。
・・・ぁれ・・・えっと・・・麗彪さん・・・?
横を見たら、ちゃんと、麗彪さんがいる。
なのに、前にも・・・?
「美月、俺が本物だから。こっちは偽物な」
「おいおい、父親を偽物呼ばわりかい」
横にいる麗彪さんと、前にいる・・・麗彪さん?
横にいるのがほんもの、で・・・前にいるのがにせもの?
にせものって、なあに?
「美月ちゃん、俺はそんなに麗彪に似てるかな?」
・・・にてる・・・けど、ちゃんと見たら、ちがうってわかった。
麗彪さんより、少し、声がひくくて、かみのけが短くて、おようふくがちがう。
もしかして、この人が・・・。
「まさとらさん・・・?」
「麗彪の父親の雅彪 です。よろしくね」
麗彪さんのおとうさん、まさとらさん。
麗彪さんみたいに、優しそお・・・ぜんぜん、こわい人じゃないみたい。
「み、美月です、よろしくおねがいしますっ」
「可愛いなあ。おいで、振袖姿をよく見せて」
「ぁ、はぃ・・・」
「だめだ」
おいでって言われて、立とうとしたら、麗彪さんにぎゅってされた。
あっ、そおだった、行っちゃだめなんだった。
「別に奪 って喰おうってんじゃないのに。随分と大事にしてるじゃないか」
「喰わなくても盗 るだろ」
「人聞きが悪いなあ。その子は俺の義理の息子になるんだろ?可愛い息子の晴れ姿を愛 でて何が悪い。あ、みっちゃん、俺の事はパパって呼んでね」
みっちゃん・・・?
それ、ぼくのこと?
まさとらさんのこと、ぱぱってよぶの?
「ぱぱ・・・?」
「うん、可愛いみっちゃんにはパパが何でも買ってあげようね」
「やめろ!美月には俺がいるからいいんだよ!パパ呼ばわりされたいなら俺がいくらでも呼んでやる!」
そのあと、麗彪さんとぱぱがけんかみたいになっちゃった。
どおしよってなったけど、駿河さんが来て、けんかじゃなくてなかよしなんですよって、おしえてくれた。
なかよし・・・なの?
じゃあ、だいじょおぶ、かな。
ともだちにシェアしよう!