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ぱぱ

美月(みつき)side】 「ここが・・・麗彪(よしとら)さんの・・・じっか・・・」 おっきなおうち。 ひろーいお庭。 車ようのおうちもあって、いっぱいカッコイイ車があった。 くつをぬぐとこも広くて、いっぱい人がいて、おじぎしてた。 みんな、お帰りなさいって言ってたみたいだけど、麗彪さんは、おう、って言っただけだった。 ちゃんと、ただいまって、言わないの? 「美月、手ぇ放すなよ」 「うん」 車からおりて、ずっと麗彪さんと手をつないでる。 おうち出る時も、車からおりる前にも、手ははなしちゃだめって、約束したから。 ぼく、駿河(するが)さんにふりそできせてもらったけど、ちょっと歩きにくいの。 でも、ちゃんと、転ばないよおに麗彪さんが手をつないでてくれるから、だいじょおぶ。 ふりそでは、うすもも色で、下の方に金色のお花がかいてある。 ししゅうってゆうんだって。 あと、おなかにぐるぐるまいて、時任(ときとう)さんがうしろでちょうちょみたいにしてくれたのが、おび。 おびも、ししゅうがいっぱいしてある。 金色と銀色の、おおぎ、だって。 扇・・・あおいで風を出す折りたたみ式の道具、儀式、舞などにも手に持つ、せんす、すえひろ。 じしょで調べたけど、ちょっとむずかしくて麗彪さんに聞いたら、なつになったら使うんだって。 「支度は出来てるそうです。挨拶済んでから、麗彪さんの部屋に行きましょう」 「ああ。美月、これから親父に挨拶に行くけど、なんて言うか覚えてるか?」 「あけまして、おめでとうございます!」 ちゃんと、おぼえてます! あと、ほかにはしゃべっちゃだめってことと、おいでって言われても、行っちゃだめってことも。 麗彪さんのおとうさん、まさとらさん。 そんなに、こわい人なのかなぁ・・・。 「親父、明けましておめでとうございます」 「おめでとう。やあっと連れてきたか。美月ちゃんだっけ?」 「ぁっ、あけまして、おめでとうございますっ」 麗彪さんの横に座って、おじぎして、ごあいさつして、どきどきしながら麗彪さんのおとうさんを見た。 ・・・ぁれ・・・えっと・・・麗彪さん・・・? 横を見たら、ちゃんと、麗彪さんがいる。 なのに、前にも・・・? 「美月、俺が本物だから。こっちは偽物な」 「おいおい、父親を偽物呼ばわりかい」 横にいる麗彪さんと、前にいる・・・麗彪さん? 横にいるのがほんもの、で・・・前にいるのがにせもの? にせものって、なあに? 「美月ちゃん、俺はそんなに麗彪に似てるかな?」 ・・・にてる・・・けど、ちゃんと見たら、ちがうってわかった。 麗彪さんより、少し、声がひくくて、かみのけが短くて、おようふくがちがう。 もしかして、この人が・・・。 「まさとらさん・・・?」 「麗彪の父親の雅彪(まさとら)です。よろしくね」 麗彪さんのおとうさん、まさとらさん。 麗彪さんみたいに、優しそお・・・ぜんぜん、こわい人じゃないみたい。 「み、美月です、よろしくおねがいしますっ」 「可愛いなあ。おいで、振袖姿をよく見せて」 「ぁ、はぃ・・・」 「だめだ」 おいでって言われて、立とうとしたら、麗彪さんにぎゅってされた。 あっ、そおだった、行っちゃだめなんだった。 「別に()って喰おうってんじゃないのに。随分と大事にしてるじゃないか」 「喰わなくても()るだろ」 「人聞きが悪いなあ。その子は俺の義理の息子になるんだろ?可愛い息子の晴れ姿を()でて何が悪い。あ、みっちゃん、俺の事はパパって呼んでね」 みっちゃん・・・? それ、ぼくのこと? まさとらさんのこと、ぱぱってよぶの? 「ぱぱ・・・?」 「うん、可愛いみっちゃんにはパパが何でも買ってあげようね」 「やめろ!美月には俺がいるからいいんだよ!パパ呼ばわりされたいなら俺がいくらでも呼んでやる!」 そのあと、麗彪さんとぱぱがけんかみたいになっちゃった。 どおしよってなったけど、駿河さんが来て、けんかじゃなくてなかよしなんですよって、おしえてくれた。 なかよし・・・なの? じゃあ、だいじょおぶ、かな。

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