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肉食獣と変態
【麗彪 side】
午前のおやつ休憩の後、合流した駿河 が美月 を服屋へ連れて行った。
もちろん俺も一緒に。
時任 は買った物を車に置きに行くと言って別行動だ。
「あ~ほら、これも可愛いですよ!サイズ感も程よくゆるっとして。美月くん、窮屈なの苦手なんですよね~」
美月が大人しいのをいい事に、次から次に試着させている。
少しでも美月が疲れた素振りを見せれば、すぐに止めさせるんだが。
「次はこれを着てみて?」
「はいっ」
美月、何で駿河なんかに付き合ってやってるんだ。
ほんとに優しい・・・天使だ・・・今着てるサロペット姿もすげぇ可愛いぞ美月・・・!
とりあえず、試着して美月が嫌がってなかったやつは全部買う。
「ぁ、あのっ、そんな、そんなに、ぜんぶ、買っちゃうのっ?」
「全部じゃないですよ~、やめたのもあります。ちゃんと似合うやつだけを選んでますから、麗彪さんがね」
「よしとらさんが・・・」
美月が俺を見上げ、目が合うと少し頬を紅くして、照れたように笑った。
あまりの可愛さに写真を撮る事も出来ず、思わず抱き寄せる。
「こらこら落ち着いてくださいよ肉食獣」
「誰が肉食獣だ」
「にくしょくじゅう?」
俺の腕の中で首を傾げる美月。
・・・喰うぞ。
「肉を食べる動物の事ですよ。虎は肉食獣ですね」
「トラ・・・でも、よしとらさんは、ちゃんと、やさいも食べます・・・かっこいいのは、おんなじだけど」
美月、カッコいいってのはやっぱり俺の事を言っていたのか。
・・・意味、知ってて言ってるんだよな?
可愛いの意味は知らないのに・・・。
そうか、一応男の子だしな。
車も好きな様だし。
・・・そういや可愛いの意味を教えてやるって約束してたな。
調べておくか・・・。
「美月くん、カッコイイ以外で麗彪さんにぴったりの言葉、教えてあげましょうか」
「はいっ」
「それはねぇ・・・・・・・・・」
駿河が美月に何やら耳打ちをしている。
これは、俺に殴られる覚悟でやってんだよなあ?
「おい駿河てめぇ・・・」
「ょ、よしとらさんの・・・へんたいっ」
「ぐ・・・っ!?」
駿河を殴ろうとして、俺が美月に殴られた・・・言葉で。
・・・くそ、上目使いに変態呼ばわりされてんのに、相手が美月だと全く嫌じゃねぇ・・・。
「ほらね、嬉しそうでしょ?」
「ん・・・、うれしそ・・・ですか?・・・ぁの、よしとらさん、へんたいって、どおゆ・・・」
「あ~美月くん、聞かないであげて俺のためにも」
聞きたいのを我慢して、素直に頷く美月。
・・・命拾いしたな駿河。
「服も買ったし、他に必要な物はありましたっけ?」
「取り敢えず足りてんだろ。美月、何か欲しいもんあったか?」
「えっと、ぜんぶ、買ってもらいました!」
美月は相変わらず、嬉しそうに笑う。
俺と、駿河か時任がガードしていたとは言え、人の多いモールを半日歩いて疲れている筈だ。
心配過ぎる。
「帰って飯にするか」
「ぁ、はいっ」
心なしかほっとしたような表情の美月を抱き上げ、車へ向かう。
俺も駿河も、人目はもともと引く方だから、今さら見られても何とも思わない。
美月も、周りはあまり気にしていない様だった。
「お昼ご飯何ですかね~」
「オムライス」
「うおっ!?時任、いつの間に・・・」
忍者かてめぇは。
時任が加わり更に目を引く様になったが、直ぐに車に乗り込みモールを出る。
帰りの車中では、オムライスを知らない美月に、オムライスがどんな物か誰が一番上手く説明できるかで争うのだった。
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