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嫌いになんかならない
【麗彪 side】
「うそ、ついて・・・ごめんなさぃ」
小さな声で、美月 が言った。
風呂で泣き出してから、ぐずるのをあやし、やっと泣く理由を聞くことができた。
・・・が、どういう事だ。
知っていた・・・セックスしても妊娠しないと・・・知っていた・・・だと・・・?
俺の汚い嘘を知っていて、それでも誘ってきたってことか・・・?
こんなどうしようもない獣 の欲を充すために、健気に求めてくれたという事か・・・。
・・・いや・・・謝るべきは俺の方だ。
「嘘を吐いて、美月を騙して、本当にすまなかった」
「・・・ぁ、ぇと、はぃ・・・ぼくも、ごめんなさい」
何故、美月が謝る。
嘘に付き合わされていたのは美月なんだそ。
「美月は悪くない。俺が嘘を吐いたのが悪い。許してくれ」
「ゅ、ゆるしますっ!・・・ぁの、ぼくも、ゆるしてくれますか・・・?」
「許すも何も、美月は何も悪く・・・」
「あかちゃんできないって知ってたのに、ぇ・・・えっち、してほしくて、あかちゃんつくろって言って・・・ごめん、なさぃ・・・」
そしてまた、小さな声で言う。
嫌いにならないで、と。
「じゃあ美月は、妊娠しないって知っていてお前を抱く俺を嫌いになるか?」
「なっ、ならないっ!ぜったいならないっ!」
「俺も、美月を嫌いになんかならない」
何よりも愛している。
可愛くて純粋で優しい天使の美月を。
「麗彪さん・・・だいすきぃ・・・っ」
「愛してる、美月」
俺に向かって両腕をのばす美月を抱きしめる。
こんなに幸せでいいんだろうか。
俺は近々死ぬんじゃないか。
それとも、自分でも知らぬ間に相当な徳を積んできたんだろうか。
可愛くて純粋で優しい天使の美月が、エロいなんて。
これから先もきっと、幸せしかあり得ない。
この上無い喜びを感じながら、天使の柔らかな唇に、キスをした。
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