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怖い
【麗彪 side】
「・・・・・・・・・っ!」
「大丈夫か、美月 ?」
「・・・・・・(こく)」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・っっ!!」
「美月、これやめようか?」
「・・・・・・(ふるふる)」
さっきから俺の質問に無言で応える美月。
俺をちらりとも見ずに。
悔しいが、リビングの大画面テレビから目が離せなくなっているらしい。
「・・・・・・・・・っっっ!!!」
「美月、テレビ見たままでいいから俺の膝の上に座れ。ぎゅってしててやる」
「(こくこくこく)」
テレビ画面から目を離さず、俺の手に導かれるまま俺の膝上に座る美月。
宣言通り後ろからぎゅっと抱きしめると、俺の腕にしがみ付いてきた。
ことの発端は、美月の「ゆうれいってどんなの?」という質問からだった。
言葉で説明するか映像で見せるか迷った挙句、スプラッタ無しで年齢制限も無しの、駿河 曰くマイルドホラー映画だというDVDを見せることにしたのだが・・・。
「・・・・・・・・・ひっ!」
「美月、無理しなくていいんだぞ」
「・・・・・・(ふるふる)」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・ひぅっ!!」
音量が一瞬上がったり、画面の端に影が映ったり、ちょっとした脅かし演出が入る度、美月の身体がびくりと跳ねる。
映画は確かにマイルドではあるが、それはあくまで俺たちの主観であって、そもそも幽霊の概念がなかった美月に見せるのは間違いだったかもしれない。
何度も停止ボタンを押そうとしたが、当の美月が真剣に見ているのでそれも出来なかった。
画面の中の幽霊なんかより、腕の中の美月の心臓が心配で不安で、怖くて仕方なかった。
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