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帰宅時間

麗彪(よしとら)side】 だるい。 ここ2日ずっと雨だ。 部屋の中は除湿しているが、窓から見える空は鉛色でじめじめじとじとまじでうぜぇないつまで降んだよいい加減にしろ。 終わりの見えない仕事にも嫌気がさし、だからといって放棄するわけにもいかず、ただ黙々と手を動かしている。 せめて美月(みつき)がいてくれたら、俺の機嫌がこんなにも悪くなることはなかったんだが。 「麗彪さん、それ済んだらこっちの書類にも目を通してもらえますか」 「・・・ん」 「コーヒーです」 「・・・ん」 時任(ときとう)も慣れたもので、不機嫌極まる俺相手でも通常運転だ。 まあ今の俺は、ヘタな気を使ってくるヤツに対しオートでキレる状態だしな。 あー・・・美月がいればなー・・・。 「・・・はぁー・・・」 「あと2時間もすれば帰ってきますよ」 「・・・にじかん・・・」 読心術なのか、それとも俺がわかりやすいのか。 眼前にある書類の山を俺が集中して処理するため、駿河(するが)が美月を連れてランチと買い物に出かけている。 おやつまでには帰る、という約束で。 おやつまでには終わらせろ、という意味でもある。 「おい時任、これ・・・」 「今手が離せないんで、置いておいてください」 「・・・ん」 書類を投げつけてやろうかと思ったが、おやつのクッキー生地をこねているところだったので見逃してやった。 美月が楽しみにしてるからな。 あー・・・美月はやく帰ってこねぇかなー・・・。 「帰ってくるまでに終わらせないと会わせてもらえませんよ」 「・・・くそ」 まだあと2時間も会えないのに、さらにその時間が延びるなんて考えただけでも気が狂いそうだ。 ただでさえ梅雨に精神を蝕まれ、神経にカビが生えそうだってのに。 「あと1時間で終わらせたら、美月も1時間早く帰ってきてくれるか」 「・・・・・・駿河に1時間早く帰るよう連絡します」 よし。 雑念を払い無心になってノートPCへ向かう。 結果、1時間早く帰宅した美月を玄関で出迎える事ができたのだった。

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