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シャチさんととびこみ

美月(みつき)side】 「みっちゃーん!」 「ぱぱー!」 車からおりたら、ぱぱがむかえに来てくれた。 いつも着てる着物じゃなくて、普通のお洋服着てる。 ここはぱぱのおうちじゃないけど、かしてもらってるんだって。 お庭に大きいプールがあって、お風呂もある、ぷらいべーと、ゔぃら? 「わー!すごーい!」 ほんとに、大きいお風呂・・・じゃなくて、ぷーる! お湯じゃなくてお水だ! あ、あっちにも丸いぷーる? 「あれはジャグジーだよ。後で一緒に入ろうね」 「だめだ、風呂は俺と入る約束だよな美月」 じゃぐじー、は、お風呂なんだ。 うん、お風呂は麗彪(よしとら)さんとって約束してる。 でも広いから、ぱぱもいっしょに入れるよ? 「麗彪さん、みんなで入ろうよ、広いよ?」 「・・・ぐ・・・っ、今日だけな」 お部屋に入って、みんなでみずぎに着がえる。 ぱぱはみずぎ着てたんだって。 あれ、お洋服じゃなくて、みずぎなんだ。 ぼくのみずぎは、ピンクの短パン。 上は白い、らっしゅがーど? 「あら、美月ちゃんの水着レディースじゃない?似合う〜」 「れでぃーすって?」 「女の子用ですね」 カンナさんと片桐(かたぎり)さんは、ぱぱと同じ、めんずのみずぎだって。 片桐さんは、らっしゅがーど、着ないんだ。 いっぱいケガのあとがある・・・。 「片桐さん、いたい?」 「大丈夫ですよ、全部治ってますから。心配しないで・・・」 「あたしが治してあげたのよ〜上手でしょ!」 よかった、もお痛くないんだ。 片桐さん、なんでこんなにケガしちゃったのかな。 お掃除する時に転んじゃった? 「美月、可愛いな。ほら、日焼け止め塗ってやるからこっち来い」 麗彪さんが手でひやけどめ、ぬってくれる。 ひやけすると、赤くなって痛くなって、皮がむけるんだって・・・。 「ひやけ、こわい・・・」 「全身しっかり塗っておこうな」 「ん、ふふ、くすぐったい」 カンナさんも、ひやけどめぬってる。 しがいせんは、おはだの、てんてき・・・だって。 帰ったら辞書で調べよう。 「麗彪さんも、ひやけどめぬる?」 「ああ。背中、届かないから美月が塗ってくれるか?」 「うん!」 麗彪さんの大きい背中に、ひやけどめをぬりぬり。 全部ちゃんとぬらなきゃ、麗彪さんの皮がむけちゃう・・・。 「あれ、時任(ときとう)さん、みずぎじゃないの?」 「時任は泳げないんですよ〜。だから今日はお料理係ですね〜」 駿河(するが)さんに言われて、ちょっと怒った時任さん。 駿河さんにだけ、ジュースあげなかった。 だめだよ、いじわるしちゃ。 あ、でも、駿河さんが先に、いじわるしたの、かな? 「おいで美月」 カンナさんとじゅんび運動してから、ぷーるに入る。 先に麗彪さんが入って、ぼくを待っててくれた。 「ひゃあっ!つめたいっ!」 お洋服、みずぎだけど、着たままお風呂入るみたいでふしぎ。 でもお水がつめたくて、お風呂とぜんぜん違う。 「恐くないか?」 「きもちー!たのしー!」 「みっちゃん、浮き輪あるよ。あとシャチさんも」 しゃちさん、海の生き物の図鑑で見た、シャチだ! 空気が入ってて、上に乗って遊ぶんだって。 麗彪さんに乗せてもらって、ぱぱに押してもらう。 ぷーる、楽しい!! 「おい気を付けろよ親父、落ちたら美月が溺れる」 「そんな事させないよ」 おぼれるって、どんなだろう。 こわい事なのかな? 少しはなれたとこで、駿河さんとカンナさんがばしゃーんってぷーるにジャンプして入った。 お水の中に入ったまま、すぐ出てこなくて、先にカンナさんがぷはって出てきて、駿河さんはそのあとに出てきた。 長くもぐった方が勝ちだったみたい。 すごい、あれやりたい! 「ぼくも、ぼくもあれ、ジャンプしてぷーるに入るのやってみたい!」 「いきなり飛び込むのは危ないから、先に水に潜れるか試してみような」 シャチさんからおろしてもらって、麗彪さんのマネしていっぱい息をすって、ぷーるの中でしゃがむ。 ぷーるの中で、麗彪さんと目が合って、うれしくて、口から息があわになって出ちゃって。 すぐ苦しくなって立っちゃった。 立つ時にちょっとばたばたしちゃったけど、麗彪さんがちゃんとささえててくれたから、こわくなかった。 「もぐれたー!」 「すごいな美月。じゃあ飛び込むのやってみるか?」 「うん!」 「みっちゃん水が恐くないんだなあ。麗彪は小さい時、水が恐くて潜れなかったんだよ?」 「そーなの?」 じゃあ、とびこむの、麗彪さんは見てるだけにした方がいいかな。 幽霊の時みたいに、こわいのがまんさせちゃったらかわいそうだもん。 麗彪さんがこわくないよおに、ぼくがまもるからね。

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