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10秒後の着信

麗彪(よしとら)side】 何とか片付いて、カンナのとこ行ってシャワー浴びて治療して、携帯を見たら日付が変わってた。 美月(みつき)、寝ちゃったよな。 電話で起こすのは可哀想だ。 でも、もし起きてたら・・・声が聞きたい。 美月の番号宛に「仕事終わった」とメッセージを送る。 これなら起こす事はないだろうし、もし起きてたら返事をくれるかもしれない。 ダメ元で送ったメッセージ。 その10秒後・・・着信画面が表示された。 「みつきっ!起きてたのか?」 『よしとらさんっ、おしごとっ、おつかれさま・・・っ』 ああ、泣いてる。 美月が泣いてる。 何で俺は美月の(そば)にいねぇんだ。 「遅くなってごめんな。眠いのに、起こしてごめん・・・」 『ううん、寝ないでまってたよ。麗彪さんの声、聞きたくて、まってた』 「そっか。俺も美月の声が聞きたかった。明日の朝すぐ迎えに行くから・・・今、どこにいる?」 きっと、親父の部屋で、親父と寝てるんだろう。 その方が美月も少しは安心できるだろうし、仕方ない・・・。 『麗彪さんのお部屋。とらきちといっしょ』 俺の部屋に、いるのか。 ああ、そうか、美月は俺の部屋にいてくれたのか。 俺の美月が、俺の部屋で、待っていてくれてる。 「今すぐ行く。このまま電話してていいか?美月は寝ててもいいから」 話しながら車に乗り込みエンジンをかける。 美月は眠いだろうに、頑張って起きて声を聞かせ続けてくれた。 『麗彪さん・・・あいたい・・・』 「ああ、すぐ行く。愛してるよ美月。もうちょっとで着くから。愛してる・・・」 『ん、ぼくも・・・だいすき・・・あいしてる・・・』 30分後、人通りがないおかげで誰もはねることなく、(さかき)家へ到着した。

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