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失敗った

麗彪(よしとら)side】 失敗(しくじ)った。 美月(みつき)が気絶するまで、しかも翌朝立てなくなる程がつがつと奥まで執拗(しつこ)く犯すとは・・・。 立てない事を可愛らしく責めてくる美月に和んでる場合じゃない。 いつも以上に丁寧に世話を焼き、本当は着る気のなかった兎柄のTシャツも着て、とことん美月に尽くさねぇと。 「昼飯食って、海に行くか。暑いからちょっとだけ」 「うんっ!あ、海の水、飲まなきゃ!」 飲んじゃだめだぞ。 そういや、前に来た時は味見し損ねて拗ねてたっけ。 「舐めるだけな」 「ぺろって?」 そう言って、小さな赤い舌をぺろっと出す美月。 飛び出しそうになる(けだもの)を押さえ付け、携帯で写真を撮るに留めておく。 「凄くしょっぱいぞ」 「しょっぱい・・・おいしくない?」 「まあ、美味くはないな」 ホテルのレストランで昼食を摂ってから、車で海へ向かう。 海辺の駐車場に車を停め、降りる前にふと後部座席に麦わら帽子が置いてあった事を思い出した。 これも駿河(するが)が用意したんだろう。 大きいリボンが付いた麦わら帽子を美月にかぶせれば、夏の妖精の出来上がりだ。 手を繋いで砂浜を歩き、波打ち際まで行ってから美月のサンダルを脱がしてやる。 砂浜の温度が高そうだったから、美月は片手で抱き上げたままだ。 自分も靴を脱ぎ、海水で湿った砂の上へ美月をそっとおろした。 「ぅあ、外なのに、はだし、いいの?」 「いいんだ。ほら、波が来るぞ」 さあーっと足元を波が襲う。 その感覚に戸惑いながらも、目が離せないでいる美月が愛おしい。 裸足で海に入ったのも、初めてだろうから。 ただ、波が引いて行く時には少しパニックになりそうだった。 「ぁっ、やだっ、おき、こわいっ!」 「大丈夫だ、俺がちゃんと捕まえてるから。大事な美月を海になんてくれてやらねぇよ」 必死に俺にしがみ付くの可愛過ぎだろ。 冬の海で、波に捕まると沖に流されるって教えたんだっけ。 ちゃんと覚えてて偉いな。 「麗彪さんがつれてかれちゃったらやだっ」 「俺は美月のいない海には行かない」 俺の事を心配してくれんのは、美月くらいだ。 波にも海にも連れて行かれないし、怪我したって大した事はない。 親父に叱られても、オカアサンにぶたれても、俺はなんともない。 美月、お前が一緒にいてくれるなら。 「ずっと俺のモノでいてくれ。たまに外に遊びに連れて行くから、これからもずっと俺の部屋で、俺だけの美月でいてくれ」 美月を波から救い上げ、強く強く抱きしめる。 獣の本能か、唇を貪り、首筋に噛み付いて。 「うん。ぼく、麗彪さんのものだよ。ぼくは全部、麗彪さんのもの」 愛する人の手が、自分の首に縋り付く。 それが幸せ過ぎて、俺はまた忘れてしまった。 意外と根に持つ美月に、海水を味見させてやるのを・・・。 ああ、また失敗(しくじ)った。

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