94 / 300
お出かけ
【美月 side】
今日は麗彪 さんと駿河 さんがお仕事に行ってて、時任 さんと2人でお留守番。
ぼくはまどかといっしょに片桐 さんにもらったDVD見てる。
麗彪さんがいない時だけ、まどか抱っこしてるんだ。
時任さんはおやつのケーキ作ってる。
「美月、買い物に行く。すぐ戻るけど、待ってるか?」
時任さん、生クリームが足りないからって、お買い物に行くんだって。
「んー、DVD見て待ってます」
「わかった。15分で戻る」
「いってらっしゃい」
時任さんをお見送りして、またまどかとDVDの続きを見てたら、玄関が開く音がした。
あれ、時任さんはやい。
まだ5分くらいしかたってないよ?
「こんにちはお嬢。お迎えに来ましたよ」
「あっ、新名 さん、こんにちは!おむかえって?」
時任さんが帰って来たんじゃなくて、新名さんだった。
あれ、でも今日は時任さんとお留守番だから、ぱぱのお家には行かないよ?
「ぱぱのお家に行くんですか?」
「いいえ、俺とお出かけしましょう。真叶 も一緒に」
「まどかも?どこ行くんですか?時任さんもいっしょですか?」
新名さんは、いつもみたいににこにこして、ぼくの手をつかんだ。
「時任は来ません。お嬢と俺と、真叶の3人でお出かけです。あれ、そのパーカーもしかして麗彪さんの着てます?ぶかぶかで可愛いですけど、着替えましょうか」
え、でも、時任さん、もうすぐ帰ってくるよ?
勝手にお出かけしたら、時任さん心配しちゃう・・・。
「時任は遅くなるそうなので、俺が代わりにお嬢のお相手をしますから。さ、こっちの白くてふわふわのフリースにしましょう。お手伝いしますね」
このまま、新名さんとお出かけして、いいのかな。
時任さん、生クリームの他にもお買い物あったのかな。
麗彪さん、ぼくが新名さんとお出かけするの、知ってるのかな。
新名さんは優しいし、いっしょに行っても、大丈夫、だよね。
でも・・・どおしよ・・・麗彪さん・・・ぼく、どおしたらいいの・・・。
「あの、麗彪さんに電話、してもいいですか?新名さんとお出かけするねって、ちゃんと言って・・・」
「ああ、大丈夫ですよ。内緒で行きましょう」
え・・・?
ないしょって、ひみつってことだよ・・・?
麗彪さんに、うそつくってこと・・・?
そんなの・・・。
「だめ、です。麗彪さんにないしょは、だめ」
「じゃあ後でちゃんと言えばいいですね。麗彪さんが帰って来たら、俺と2人でお出かけしたって言いましょう」
「そ、それも、だめです。だって、麗彪さんがお仕事だから、ぼくお留守番するって約束したから。だから、お家で麗彪さんを待ってます。ごめんなさい、お出かけは行けません」
新名さん、にこにこしたままだけど、ぼくの手をつかんだまま、はなしてくれない。
なんで、怒ってる?
笑ってるのに、怒ってる、よね?
ぼくが、お出かけ行かないって、わがまま言ったから?
言うこと、ちゃんと聞かないと、だめ、なのかな。
ぼく、新名さんと、お出かけしなきゃ、だめ・・・?
「ぁ・・・の、ぼく・・・おでかけ・・・ぅうっ」
「あっ!な、泣かないでくださいお嬢!すみません、無理強いするつもりじゃ・・・」
新名さん、恐い感じしなくなった。
よかった、ゆるしてくれた・・・?
でも、お出かけ、行かなきゃだめ・・・?
「ただいま。ん、誰か来て・・・美月?どこだ?」
あ、時任さん帰ってきた!
「ときと・・・さ・・・っ、おか、ぇ・・・っ」
「美月!?おいこら新名、何してやがる」
「お嬢をデートに誘ったんですが、フラれてしまいました」
今度は時任さんがすごく怒ってる。
新名さんが手をはなしてくれて、時任さんがぼくを抱っこしてくれた。
「帰れ。麗彪さんが知ったらただじゃ済まない」
「そうですね。まあ、どうせ知られてしまうでしょうが・・・せめてお嬢とコンビニデートしたかったです」
コンビニデート?
麗彪さんと時どきしてる、手をつないでゆっくり歩いて、コンビニでアイスとかお菓子とか買ってもらって、食べながら帰る、あのコンビニデート?
新名さん、コンビニデートしたかったの?
それだけなら、ちょっとだから、いっしょに行けばよかった、かな・・・。
「ぁ、あの、新名さんごめんなさい。ぼく、言うこと聞いて、お出かけすればよかった・・・?」
「だめだ美月。断るのが正解だ」
そっか、断ってよかったんだ。
よかった・・・。
「残念ですがまあ、お嬢が真叶を大事にしてくれてたのがとても嬉しかったので、大人しく帰ります」
うん、麗彪さんがいない時だけど、まどかちゃんと抱っこして大切にしてます。
今も、ずっと抱っこしてます。
だから・・・。
「あ、あの、新名さん、今度は麗彪さんに言ってから、いっしょにお出かけしましょ?」
新名さんはにこにこして、笑顔なのに、悲しそうに見える。
ぼくが行かないって言ったから、なのかなって。
そんな悲しそうな笑顔は、してほしくない。
「はいっ!次はちゃんと麗彪さんにお願いしてからお迎えに来ますね!楽しみにしてます!」
悲しそうな笑顔が、ちゃんと嬉しそうな笑顔に変わった。
よかった。
時任さんに抱っこされたまま、玄関で新名さんをお見送りして、それからリビングのソファに座らせてもらった。
時任さん、まだちょっと怒ってる、かな。
あ、あやまらなきゃ・・・。
「時任さん、ごめんなさ・・・」
「美月は悪くない。ちゃんと断ったんだろ、偉かったな。とょっと待ってろ、麗彪さん呼ぶから」
え、麗彪さん呼ぶの?
だってまだ、お仕事してるよね?
ぼくのせいで、麗彪さんのお仕事のじゃま、しちゃう・・・。
どおしよ・・・。
麗彪さんはいつも、ぼくは悪くないって言ってくれるけど・・・。
時任さんが電話で「すぐ帰ってきてください」って言ってる。
それだけ言って、電話きった。
麗彪さん、帰ってくるんだ・・・。
いつもは嬉しいのに、今は・・・。
大好きな麗彪さんが帰ってくるの、恐いって思っちゃうの、なんでだろ・・・。
ともだちにシェアしよう!

