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お出かけ

美月(みつき)side】 今日は麗彪(よしとら)さんと駿河(するが)さんがお仕事に行ってて、時任(ときとう)さんと2人でお留守番。 ぼくはまどかといっしょに片桐(かたぎり)さんにもらったDVD見てる。 麗彪さんがいない時だけ、まどか抱っこしてるんだ。 時任さんはおやつのケーキ作ってる。 「美月、買い物に行く。すぐ戻るけど、待ってるか?」 時任さん、生クリームが足りないからって、お買い物に行くんだって。 「んー、DVD見て待ってます」 「わかった。15分で戻る」 「いってらっしゃい」 時任さんをお見送りして、またまどかとDVDの続きを見てたら、玄関が開く音がした。 あれ、時任さんはやい。 まだ5分くらいしかたってないよ? 「こんにちはお嬢。お迎えに来ましたよ」 「あっ、新名(にいな)さん、こんにちは!おむかえって?」 時任さんが帰って来たんじゃなくて、新名さんだった。 あれ、でも今日は時任さんとお留守番だから、ぱぱのお家には行かないよ? 「ぱぱのお家に行くんですか?」 「いいえ、俺とお出かけしましょう。真叶(まどか)も一緒に」 「まどかも?どこ行くんですか?時任さんもいっしょですか?」 新名さんは、いつもみたいににこにこして、ぼくの手をつかんだ。 「時任は来ません。お嬢と俺と、真叶の3人でお出かけです。あれ、そのパーカーもしかして麗彪さんの着てます?ぶかぶかで可愛いですけど、着替えましょうか」 え、でも、時任さん、もうすぐ帰ってくるよ? 勝手にお出かけしたら、時任さん心配しちゃう・・・。 「時任は遅くなるそうなので、俺が代わりにお嬢のお相手をしますから。さ、こっちの白くてふわふわのフリースにしましょう。お手伝いしますね」 このまま、新名さんとお出かけして、いいのかな。 時任さん、生クリームの他にもお買い物あったのかな。 麗彪さん、ぼくが新名さんとお出かけするの、知ってるのかな。 新名さんは優しいし、いっしょに行っても、大丈夫、だよね。 でも・・・どおしよ・・・麗彪さん・・・ぼく、どおしたらいいの・・・。 「あの、麗彪さんに電話、してもいいですか?新名さんとお出かけするねって、ちゃんと言って・・・」 「ああ、大丈夫ですよ。内緒で行きましょう」 え・・・? ないしょって、ひみつってことだよ・・・? 麗彪さんに、うそつくってこと・・・? そんなの・・・。 「だめ、です。麗彪さんにないしょは、だめ」 「じゃあ後でちゃんと言えばいいですね。麗彪さんが帰って来たら、俺と2人でお出かけしたって言いましょう」 「そ、それも、だめです。だって、麗彪さんがお仕事だから、ぼくお留守番するって約束したから。だから、お家で麗彪さんを待ってます。ごめんなさい、お出かけは行けません」 新名さん、にこにこしたままだけど、ぼくの手をつかんだまま、はなしてくれない。 なんで、怒ってる? 笑ってるのに、怒ってる、よね? ぼくが、お出かけ行かないって、わがまま言ったから? 言うこと、ちゃんと聞かないと、だめ、なのかな。 ぼく、新名さんと、お出かけしなきゃ、だめ・・・? 「ぁ・・・の、ぼく・・・おでかけ・・・ぅうっ」 「あっ!な、泣かないでくださいお嬢!すみません、無理強いするつもりじゃ・・・」 新名さん、恐い感じしなくなった。 よかった、ゆるしてくれた・・・? でも、お出かけ、行かなきゃだめ・・・? 「ただいま。ん、誰か来て・・・美月?どこだ?」 あ、時任さん帰ってきた! 「ときと・・・さ・・・っ、おか、ぇ・・・っ」 「美月!?おいこら新名、何してやがる」 「お嬢をデートに誘ったんですが、フラれてしまいました」 今度は時任さんがすごく怒ってる。 新名さんが手をはなしてくれて、時任さんがぼくを抱っこしてくれた。 「帰れ。麗彪さんが知ったらただじゃ済まない」 「そうですね。まあ、どうせ知られてしまうでしょうが・・・せめてお嬢とコンビニデートしたかったです」 コンビニデート? 麗彪さんと時どきしてる、手をつないでゆっくり歩いて、コンビニでアイスとかお菓子とか買ってもらって、食べながら帰る、あのコンビニデート? 新名さん、コンビニデートしたかったの? それだけなら、ちょっとだから、いっしょに行けばよかった、かな・・・。 「ぁ、あの、新名さんごめんなさい。ぼく、言うこと聞いて、お出かけすればよかった・・・?」 「だめだ美月。断るのが正解だ」 そっか、断ってよかったんだ。 よかった・・・。 「残念ですがまあ、お嬢が真叶を大事にしてくれてたのがとても嬉しかったので、大人しく帰ります」 うん、麗彪さんがいない時だけど、まどかちゃんと抱っこして大切にしてます。 今も、ずっと抱っこしてます。 だから・・・。 「あ、あの、新名さん、今度は麗彪さんに言ってから、いっしょにお出かけしましょ?」 新名さんはにこにこして、笑顔なのに、悲しそうに見える。 ぼくが行かないって言ったから、なのかなって。 そんな悲しそうな笑顔は、してほしくない。 「はいっ!次はちゃんと麗彪さんにお願いしてからお迎えに来ますね!楽しみにしてます!」 悲しそうな笑顔が、ちゃんと嬉しそうな笑顔に変わった。 よかった。 時任さんに抱っこされたまま、玄関で新名さんをお見送りして、それからリビングのソファに座らせてもらった。 時任さん、まだちょっと怒ってる、かな。 あ、あやまらなきゃ・・・。 「時任さん、ごめんなさ・・・」 「美月は悪くない。ちゃんと断ったんだろ、偉かったな。とょっと待ってろ、麗彪さん呼ぶから」 え、麗彪さん呼ぶの? だってまだ、お仕事してるよね? ぼくのせいで、麗彪さんのお仕事のじゃま、しちゃう・・・。 どおしよ・・・。 麗彪さんはいつも、ぼくは悪くないって言ってくれるけど・・・。 時任さんが電話で「すぐ帰ってきてください」って言ってる。 それだけ言って、電話きった。 麗彪さん、帰ってくるんだ・・・。 いつもは嬉しいのに、今は・・・。 大好きな麗彪さんが帰ってくるの、恐いって思っちゃうの、なんでだろ・・・。

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