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いつか、一緒に
【麗彪 side】
マンションに戻る前に、美月のリハビリをしようと思った。
ずっとホテルの部屋に閉じ込められてるのに、外に出たいとか、マンションに帰りたいとか言わないのが、少し気になったから。
ここに閉じ籠りたいと、思っているんだと思う。
外に行こうと言ったら、緊張した表情になり、少し震えていたみたいだった。
「ねこかわいかったぁ!チュールっておいしいのかな?みんな食べにきたね!ぼくも食べてみたい!」
「あれは猫専用なので、食べちゃだめですよ」
ホテルへ戻る車中。
美月は助手席の片桐 と楽しそうにはしゃいでいる。
それでも、俺の手は放さないままだ。
「美月、猫飼いたいか?」
「うんっ!・・・ぁ、でも金魚食べられちゃうかも」
良かった、金魚のおかげで美月を猫に奪われずに済んだな。
・・・俺に猫の耳と尻尾が生えてたら、可愛がってくれたかな。
「あっ、金魚・・・ご飯あげてない・・・」
「大丈夫ですよ。私がちゃんとあげてきましたし、水槽の掃除もしておきました」
「ありがと、片桐さん」
金魚の心配か・・・マンションに帰る事はどう思ってるんだろうか。
まだ恐いなら、ホテル暮らしをもう少し続けても構わない。
「なあ美月・・・明後日、帰るけど・・・まだお泊まり続けたいか?」
「え?・・・ぇっと、ぼく、大丈夫だよ。麗彪さんといっしょなら、おうち、帰りたい」
帰りたい、と言ってくれて心底安心した。
俺と一緒ならって、条件付きだが。
「じゃあ明日はルームサービスで、チョコレートファウンテンと苺のピラミッドを用意してもらおうな」
「やった!いちごの・・・ぴらみっど?」
「エジプトって国にある三角の山みたいなのだ。今度見に行く?」
携帯でエジプトを調べて、行ってみたいと言ってくれた。
エジプトが車だけじゃ行けない場所だって、後で教えないとな。
あんまり遠いとまた恐がるかもしれない。
それでも、いつか。
「色んな所に行こうな。一緒に」
抱き寄せて、こめかみにキスして、愛する君を必ず護ると約束した。
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