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⭐︎100話到達記念⭐︎麗彪5歳児になる

*** 幼児化パロディ *** 【麗彪(よしとら)side】 朝起きたら、身体が小さくなっていた。 「・・・え、・・・だれ?」 隣で眠っていた美月(みつき)の、起き抜けの言葉に愕然とする。 俺は・・・俺のはずだが・・・。 「よしとら」 「・・・麗彪・・・さん?」 「うん」 美月の両手が、俺の頬を包む。 ふにふにと、触り心地を確かめる様に撫でられ、次に髪に触れられ、そのまま頭を撫でられた。 「麗彪さん、子どもに、なってる・・・よ?」 「みたいだな」 混乱して慌てるかと思ったが、意外に美月は冷静だった。 「えっと、顔、洗おっか」 「うん」 ベッドから下りようとしたら、(おもむろ)に抱き上げられた。 ・・・え、俺、今、美月に抱っこされてんのか? 「みつき?」 「大丈夫だよ、麗彪さん。ぼくがちゃんとお世話するからっ」 何でそんな嬉しそうなんだ美月。 俺にとってこの状況は死活問題なんだが? 「届かないから、ぼくが抱っこしておくね。はい、顔洗って?うん、じょーず」 完全に子ども扱いされてる。 中身は俺のままなんだが。 「顔拭くね、じっとしてて」 「ん」 美月に世話を焼かれるなんて・・・これはこれで悪くはないな。 だがしかし、これはいつ元に戻るんだ。 どうやって戻せばいいんだ。 そもそも何で子どもに・・・。 ぶかぶかだった部屋着を脱がされ、美月のうさみみパーカーと部屋着のふわもこショートパンツを穿かされる。 俺が美月の服を着る事になるとは・・・。 「時任(ときとう)さんと駿河(するが)さん、昨日の夜からお仕事で、今日の夜まで帰ってこれないから、ご飯はぼくが作るね」 「いや、おれがやるから」 「危ないよ。ここ座って待っててね。ふふ、麗彪さんかわいい」 俺の頭を撫でて、キッチンへ向かう美月。 俺が美月に愛でられる日が来るとは・・・。 まあ、美月が嬉しそうにしてるから、いいか。 「チーズトーストとベーコン入りのオムレツだよ。トースト熱いから、やけどしないでね?あ、サラダも食べてね。パプリカ入れてないから」 「うん」 「ふふふ、麗彪さんいい子」 美月、子ども好きだったのか。 俺との赤ちゃん欲しがってたしな・・・。 「ごちそーさま」 「はい。あ、口の横に食べかす付いてる」 「んっ!?」 俺の口元に付いた食べかすを、美月がぺろりと舐め取った。 それ、いつも俺が美月にしてるのに。 される方になると、ちょっとドキっとするな。 まあ、俺はやめないけど。 「麗彪さん、何して遊びたい?赤い車?PSP?屋上に行く?」 俺を抱き上げて、楽しそうな美月。 いつもと逆の立場で複雑だが、美月が楽しそうだから、いいか。 「みつき」 「なあに?」 「おれいがいに、こーゆーこと、するなよ」 例え子どもが相手でも、美月にこんな可愛がられるなんて許せねぇ。 「ふふっ、麗彪さんだから、お世話したいんだよ?麗彪さんが大人になるまで、僕がちゃんとお世話するからね!」 え、俺はここからまた成長して行かなきゃいけないのか? いやいや、何としてでも元に戻らねぇと。 美月に世話されるのも悪くないが、俺は美月を可愛がりたいんだ。 寝て、起きたら子どもになっていた。 なら、また寝て起きれば、元に戻れるんじゃないか? 「みつき、ねよう」 「さっき起きたばっかりだよ?」 「もとにもどれるかもしれないから。もーいっかい、ねよう」 美月が明白(あからさま)に嫌そうな顔をする。 そんなに子どもの俺を気に入ったのか。 「何で戻りたいの?」 「みつきをだっこしたいから」 「ぼくが抱っこしてあげるのに」 「えっちできないぞ」 「・・・・・・」 純真無垢なのにエロい美月は、えっち出来ないという現実に、考えを改めてくれた。 一緒にベッドへ入り、美月にぎゅっと抱きしめられた状態で横になる。 ・・・眠れねぇ。 美月の言った通り、さっき起きたばっかだしな。 「眠くないね」 「・・・うん」 「絵本読んであげる」 「・・・・・・うん」 別に絵本に興味はないが、美月の声を聞いているのは心地良いだろう。 美月専用本棚の前で、どれを読もうか2人で選ぶ。 ・・・あ、こんな本あったか? 俺が買った本じゃない・・・駿河が買ったのか? 「これ、よんだこと、あるか?」 「ん?・・・あれ?見た事ない絵本だ」 見た事ない? 美月専用本棚にあるのに? 美月は買った本は必ず最後まで読んでいる。 それなのに見た事がないなんて。 「じゃあ、これ読むね」 ─────── あるところに、大きなトラと、小さなウサギがいました。 トラはウサギが大好き。 ウサギもトラが大好き。 2匹で仲良く暮らしていましたが、ある日トラが眠ったまま起きなくなってしまいました。 ウサギは眠ったままのトラをいっしょうけんめいお世話します。 でも、トラは起きてくれません。 大好きなトラが起きないまま、もう一緒に遊べないんだと思ったウサギは、とても悲しくなりました。 どうしたらトラは起きてくれるかな? おいしいお菓子をあげたら起きるかな? きれいなお花をあげたら? おもしろい形の石は? ウサギは色んなものをトラにあげましたが、やっぱりトラは起きません。 トラの一番大好きなものはなんだろう? それをあげたら、きっと起きてくれる。 ウサギはいっぱい考えました。 いつも、トラが大好きって言っていたものはなに? ─────── 「一番・・・大好き・・・」 絵本を読みながら、美月も考えている様だ。 トラの好物なら肉なのでは? いや、でもウサギがそれ、用意できるのか? ─────── ウサギは思い出しました。 トラが、いつも、大好きと言っていたもの。 それは。 ─────── 「ウサギ、でした」 さて、この絵本の結末はどうなるのか。 さすがにトラにウサギ肉を食わせるなんて終わり方はしないよな? ─────── ウサギは眠っているトラに言いました。 ぼくをあげる。 だから起きて。 またいっしょに遊ぼう。 それからウサギは、トラに魔法のキスをしました。 トラのことが一番大好きだよ、と心をこめて。 するとトラは目を覚まし、ウサギに言いました。 ─────── 次の頁を開かなくてもわかる。 トラがなんて言うか。 「みつき」 「なあに?」 「キスして」 「・・・うんっ」 美月がそっと、俺の頬にキスをくれる。 違う、そこじゃない。 次は額に。 だから、そこじゃない。 美月の瞳をじっと見つめ、本当に欲しいキスを待つ。 美月はふわりと笑って、やっと、唇にキスをくれた。 「俺も、美月が一番大好きだよ」 「麗彪さん・・・っ」 美月のくれた魔法のキスで、俺は元の姿に戻った。 戻ったんだが・・・。 「ただいま〜。仕事が早く片付いたんでお昼いっしょに・・・て、麗彪さんそのかっこ何ですか!?」 急遽帰宅した駿河が見たのは、ベッドの上で美月を抱きしめる、美月の服を窮屈そうに着た俺。 しまった・・・。 「ちょ、さすがにそれは、変態の属性があらぬ方向に・・・」 「違う!これはそーゆーんじゃねぇよ!あーくそ、服脱いでからキスすりゃ良かった・・・」 「美月くん危ないっ!その変態から離れてっ!!」 「ふふふっ」 美月は笑って、駿河は誤解して、俺は自力で服が脱げなくて。 収拾(しゅうしゅう)がついた頃には、あの絵本の存在は忘れていた。 夜帰ってきた時任に駿河が話していて、絵本の存在を思い出したが、ベッドにも美月専用本棚にも、その姿はなかった。 駿河も時任も覚えがないと言うし。 あれは、一体何だったんだろうな。

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