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愛し方
【麗彪 side】
予定通り、夜のうちに害虫駆除は終わった。
明け方に親父から連絡があり、駿河 と時任 は現場の確認へ向かって、表向きまったり休日を過ごしていた片桐 とカンナも解放する。
カンナは朝飯を作ってから怪我人の処置へ向かい、片桐はシャワーを浴びてから仮眠をしている。
こいつ、実はここ3日程寝ていないらしい。
さすがにこき使い過ぎたと思って寝かせたが、美月が何故か興味を示したのがムカついたので、邪魔してやった。
「麗彪さん」
「ん?」
「もお寝かせてあげよ?」
優しい美月はそう言って、自分のお気に入りブランケットを片桐にかけてやった。
片桐のくせに幸せそうな顔しやがって・・・。
ブランケットを剥ぎ取りたい衝動を抑え、美月を抱き上げ寝室へ向かう。
さっき帰って来た駿河の報告によれば、マンション周辺に問題はないらしい。
並んで着替えながら、美月を久しぶりのコンビニデートへ誘ってみた。
「なあ美月、コンビニデート行くか?」
「・・・え?」
新名 の件もあるし、コンビニデートを嫌がるかもしれないとは思っていた。
それでも、猫カフェには行けたし、平気かもしれない。
だめでも別にいい。
「嫌だったら行かなくてもいい。昨日のゲームの続きしよう」
「・・・ぃ、行くっ、麗彪さんとコンビニデート行くっ!」
良かった。
手を繋ぎ、コンビニまでの道程をゆっくり歩く。
美月の様子は、特に問題なさそうだ。
「外、恐くないか?」
「え?恐くないよ?だって麗彪さんといっしょだもん」
俺とじゃなきゃ、だめって事かな。
完全に俺に依存している。
本当は良くない事なんだろう。
だが、俺はこうなる事を望んでいたと思う。
閉じ込めて、甘やかして、過保護にして、他者との関わりも制限して。
美月の環境は、俺と逢う前と違うと言い切れるだろうか。
オカアサンは美月を社会から断絶し、暴力を振るい、ネグレクトしながら15年も閉じ込めていた。
俺は美月を傷付けないし、望む事は何でも叶えてやれる。
でも、俺以外を見ないで欲しいし、俺の部屋に、俺の腕の中にいて欲しい。
他でもない美月が望んだとしても、俺は美月を逃してやる事は出来ない。
死ぬまで俺のモノでいてもらう。
美月は、分かっているだろうか。
自分がナニに捕まってしまったのか。
「ごめんな」
「どおして、あやまるの?麗彪さん、なんにも悪くないのに」
世間一般の意見では、俺は圧倒的悪者なんだが。
美月が悪くないと言ってくれるなら、それでいいか。
これからも、美月が見なくていいもの、聞かなくていい事、美月に見せたくないもの、聞かせたくない事は全て、俺が排除していけばいい。
俺の都合のいい様に、美月の人生をコントロールしてしまおう。
後悔も、躊躇いもない。
これが、俺の愛し方だから。
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