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痕が欲しいなら

麗彪(よしとら)side】 久しぶりに外で仕事をした。 美月(みつき)がすぐ側にいない事に苛立ち、会議の内容がまったく頭に入ってこなかったが、駿河(するが)がいたからなんとかなった。 側にいないとだめなのは、美月だけじゃなく、俺もだな。 家でリモートやってた方が仕事が捗ってた気がする。 「遅くなっちゃいましたね〜。後半は麗彪さんの集中力皆無でしたけど」 なんとか今日の仕事を終わらせ、駿河の運転で帰宅中。 既に21時を過ぎている。 「・・・なぁ、表の仕事なら、美月を連れてくるのはアリか?」 「ナシです・・・と言いたいところですが、俺の助手って事で連れてくるのはアリかもしれませんね。美月くんがいれば麗彪さんのパフォーマンスも上がるでしょうし」 「美月にお前の部下なんてさせてたまるか」 お前が美月の助手をやれ。 だが、職場に連れて行った時点で、他の奴らに確実に目を付けられるだろうし・・・。 「やっぱナシだな」 マンションに着き、玄関を開けると、俺のスウェットを着た美月がぱたぱたと駆け寄って来た。 そのままの勢いで俺に抱き付いてくる。 どんだけ可愛いんだよ。 「ただいま美月」 「おかえりなさい麗彪さん。遅い」 「ははっ、ごめん」 すぐ帰って来てって言われてたのにな。 どうやって機嫌を取ろうか。 取り敢えず抱き上げてリビングへ向かう。 「テストやったんだよ」 「そうか、点数良かったか?」 「片桐(かたぎり)さんがすごいってほめてくれた」 片桐は1時間程前に帰ったらしい。 時任(ときとう)が答案用紙を駿河に渡している。 駿河が用意した、大学入学共通テストの過去問だ。 今日やったのは国語、数学Ⅰ、現代社会。 他にも数学Ⅱ、化学、生物、リーディングも用意してある。 「・・・凄い」 駿河のくせに、感想はそれだけか? まあ、美月が賢いのは分かってた事だし、学力を計るためにやってる訳でもない。 単に美月がテストを受けるのが好きだってだけだ。 「・・・ごほうび」 「ん?ご褒美か、何がいいんだ?」 今度こそコンビニか? それとも猫カフェか・・・。 「・・・お風呂で、言う」 「了解」 風呂に入り、美月を丁寧に洗って、美月お気に入りの泡風呂に浸かる。 姫のご機嫌を取るため・・・と言うか俺がしたいから、何度もキスしてしまった。 逆上せる前に、ご褒美は何がいいか聞かねぇと。 「で、ご褒美は何がいいんだ?」 「・・・前と、いっしょ」 噛み跡か。 美月は痕が残るのがイイらしい。 俺も美月の肌に痕を残すのは欲が満たされてイイんだが、傷痕として残るのは嫌だ。 カンナにクリームを出してもらい、傷痕として残らないよう毎日塗りはするが、万が一残ったりしたら・・・。 「痕が欲しいならキスでもいいだろ?噛むのはもうやめよう」 「・・・・・・・・・」 ご納得頂けない様だ。 仕方ない、俺が深く噛み過ぎず、数日で治る程度の噛み方をすればいいだけの話だな。 理性保って、ちゃんと調整しよう。 「麗彪さん」 「ん?」 「ぼくの、どこ、噛みたい?」 上目遣いで聞くな。 全身くまなく噛み付いて、喰い散らかしちまうぞ。 「覚悟出来てんだろうな?」 「かくご?」 「明日立てなくシテヤル」 明日は仕事は入れてない。 朝まで、たっぷり、美月を味わおう。

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