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回転寿司と蝶ネクタイ
【麗彪 side】
「すごい!ほんとにお寿司回ってる!」
初めての回転寿司にテンションが上がる美月 。
昨夜電話で泣かせたのを心配していたが、機嫌が良さそうでよかった。
「俺も初めて来た」
取りやすい様にレーン側に美月を座らせ、その隣に座った俺も、少しテンションが上がっている。
寿司だけじゃなく、つまみとかケーキも回ってる。
おもしれぇな。
「麗彪さんといっしょに初めて、嬉しいっ!」
俺もだよ。
そんな事を本気で喜んでくれる美月と一緒にいられて嬉しい。
「取ったお皿はレーンに戻しちゃだめですよ〜」
そう言って、駿河 が早速ネギトロの皿を取った。
なるほど、食い終わった皿は積み上げるんだったか。
「回ってこない寿司で食べたいのあったら、タッチパネルでも注文できるからな」
時任 が美月にテーブル備え付けタッチパネルの使い方を教えている。
・・・こいつら、回転寿司来た事あったのか。
俺は初めて来たのに。
「あ、茶わんむしある!」
「選んで、注文数決めて、ここタッチして注文するんだ」
「なんこ?」
「美月くんと、俺の分で2つお願いします〜」
美月は茶碗蒸しも好きだ。
実家ではいつも親父の分まで食ってる。
「あ、たまご。取っていい?」
「ああ。ほら、通り過ぎるぞ」
「あっ、待って・・・取れたっ」
「あ、そのエビ取ってくれ」
「まかせてっ」
楽しそうだな。
だが、取ってばかりじゃ食べられないか。
別で注文を・・・と思ったら、既に時任がタッチパネルで目ぼしい物を注文していた様だ。
レールの向こう側から店員がまとめて渡してきた。
「美月くん、茶碗蒸しきましたよ〜。あっつ、熱いから気を付けて・・・」
「お前が気を付けろ」
美月はたまご、茶碗蒸し、サーモン、ネギトロ、アボカドサーモン、俺の皿から唐揚げを1つ・・・。
そろそろ満腹らしい、デザートを食べるかどうか悩んでいる。
俺たちは順調に皿の山を作り、美月も驚いていた。
「美月くん、気になるデザートないなら、家に大きいアイス買ってあるので、チョコソースとかフルーツとかのせて食べます〜?」
「えっ?うん、お家でアイス食べるっ!」
美月がアイスの口になったので、会計を済ませ店を出る。
車に乗り、美月が抱えている海 の顔を握っていたら、気になる事が。
「もお、海ちゃん顔の形変わっちゃうよ。ぱぱも同じ事してたんだよ?」
「なあ美月、海はこんなの付けてたか?」
「こんなの?」
海 の首に、黒い蝶ネクタイ。
こいつは裸だったはずだ。
これは、まさか・・・。
「あれ、リボン付いてる。昨日は付いてなかったのに・・・」
「外そう」
「え?でも、可愛いよ?このままがいいよ」
絶対、ヤツの仕業だ。
なんで懲りてねぇんだよ。
執拗 いクソ狐だな。
だが美月が外すのを拒否している。
どうするか・・・。
「・・・そうだな、似合ってるからこのままにしてやろうな。帰ったら片桐 にも見せてやっていいか?」
「うんっ」
片桐なら、蝶ネクタイを残したまま上手い事キレイにしてくれるだろ。
あいつも別件の仕事から帰ったばかりだろうが、美月のためなら2、3日寝なくても大丈夫だよな。
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