115 / 300

回転寿司と蝶ネクタイ

麗彪(よしとら)side】 「すごい!ほんとにお寿司回ってる!」 初めての回転寿司にテンションが上がる美月(みつき)。 昨夜電話で泣かせたのを心配していたが、機嫌が良さそうでよかった。 「俺も初めて来た」 取りやすい様にレーン側に美月を座らせ、その隣に座った俺も、少しテンションが上がっている。 寿司だけじゃなく、つまみとかケーキも回ってる。 おもしれぇな。 「麗彪さんといっしょに初めて、嬉しいっ!」 俺もだよ。 そんな事を本気で喜んでくれる美月と一緒にいられて嬉しい。 「取ったお皿はレーンに戻しちゃだめですよ〜」 そう言って、駿河(するが)が早速ネギトロの皿を取った。 なるほど、食い終わった皿は積み上げるんだったか。 「回ってこない寿司で食べたいのあったら、タッチパネルでも注文できるからな」 時任(ときとう)が美月にテーブル備え付けタッチパネルの使い方を教えている。 ・・・こいつら、回転寿司来た事あったのか。 俺は初めて来たのに。 「あ、茶わんむしある!」 「選んで、注文数決めて、ここタッチして注文するんだ」 「なんこ?」 「美月くんと、俺の分で2つお願いします〜」 美月は茶碗蒸しも好きだ。 実家ではいつも親父の分まで食ってる。 「あ、たまご。取っていい?」 「ああ。ほら、通り過ぎるぞ」 「あっ、待って・・・取れたっ」 「あ、そのエビ取ってくれ」 「まかせてっ」 楽しそうだな。 だが、取ってばかりじゃ食べられないか。 別で注文を・・・と思ったら、既に時任がタッチパネルで目ぼしい物を注文していた様だ。 レールの向こう側から店員がまとめて渡してきた。 「美月くん、茶碗蒸しきましたよ〜。あっつ、熱いから気を付けて・・・」 「お前が気を付けろ」 美月はたまご、茶碗蒸し、サーモン、ネギトロ、アボカドサーモン、俺の皿から唐揚げを1つ・・・。 そろそろ満腹らしい、デザートを食べるかどうか悩んでいる。 俺たちは順調に皿の山を作り、美月も驚いていた。 「美月くん、気になるデザートないなら、家に大きいアイス買ってあるので、チョコソースとかフルーツとかのせて食べます〜?」 「えっ?うん、お家でアイス食べるっ!」 美月がアイスの口になったので、会計を済ませ店を出る。 車に乗り、美月が抱えている(カワウソ)の顔を握っていたら、気になる事が。 「もお、海ちゃん顔の形変わっちゃうよ。ぱぱも同じ事してたんだよ?」 「なあ美月、海はこんなの付けてたか?」 「こんなの?」 (カワウソ)の首に、黒い蝶ネクタイ。 こいつは裸だったはずだ。 これは、まさか・・・。 「あれ、リボン付いてる。昨日は付いてなかったのに・・・」 「外そう」 「え?でも、可愛いよ?このままがいいよ」 絶対、ヤツの仕業だ。 なんで懲りてねぇんだよ。 執拗(しつこ)いクソ狐だな。 だが美月が外すのを拒否している。 どうするか・・・。 「・・・そうだな、似合ってるからこのままにしてやろうな。帰ったら片桐(かたぎり)にも見せてやっていいか?」 「うんっ」 片桐なら、蝶ネクタイを残したまま上手い事キレイにしてくれるだろ。 あいつも別件の仕事から帰ったばかりだろうが、美月のためなら2、3日寝なくても大丈夫だよな。

ともだちにシェアしよう!