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好きですか、嫌いですか

美月(みつき)side】 今日は朝から麗彪(よしとら)さんたちがお仕事に行ってる。 だからカンナさんが来てくれて、一緒にテレビ見てたんだけど、途中でカンナさんのケータイに電話が来た。 急いで行かなきゃ行けなくなって、でも、もおすぐ片桐(かたぎり)さんがお昼ご飯の材料持って来てくれるから、ぼく大丈夫だよって言って、カンナさんは出かけてった。 ちょっとだし、ひとりでも大丈夫。 麗彪さんのスウェット着てるし、とらきちもいるし。 テレビの続き見よおとしたら、玄関が開いた音がした。 片桐さん早かった、よかった・・・。 「こんにちは、お嬢」 「新名(にいな)さん?こんにちは、どおしたの?」 片桐さんじゃなくて、新名さんが来た。 お買い物袋、持ってる。 「さっき片桐に会って、交代しました。お嬢のお昼は俺が作りますね」 「ぁ、ありがと、ございます・・・」 ・・・あれ、これだと、新名さんと2人きりに、なっちゃう? 麗彪さんが、だめって言ってたのに。 でも、片桐さんと交代したって、ぼくのお昼ご飯作りに来てくれたって・・・。 だめですって、言えないよ・・・。 「お嬢は卵料理、好き、ですよね?」 「うん、好き」 ぼくがそお言ったら、新名さんがにこーって嬉しそおに笑った。 ぼくもつられて笑顔になる。 「オムライスはこの前来た時に作ったので、今日は親子丼にしましょう。鶏肉も、好き、ですよね?」 「好き!」 また、新名さんが、にこおーって笑う。 新名さんも、とり肉、好きなのかな。 キッチンで、新名さんがお料理始めて、ぼくもお手伝いしよおと思ってとなりに行く。 ・・・あ、でも、どおしよ、麗彪さんに電話、した方がいいかな。 新名さんがお昼ご飯作りに来てくれたよって。 でもでも、麗彪さん、お仕事中なのに、じゃまになっちゃうよね・・・。 でもでもでも、言わなかったら、ないしょになっちゃう・・・。 「あ、お嬢、麗彪さんには連絡してありますから、心配いらないですよ」 「え?そおなの?」 よかった・・・じゃあ、大丈夫だよね。 「ねえ、お嬢、カワウソの海ちゃんに首輪付けておいたんですけど、外しちゃいました?」 「ん?あのリボン、新名さんが付けてくれたの?可愛いから外してないよ。ありがと、新名さん!」 「そうですか、良かった。・・・誰かに見せました?」 「麗彪さんと、片桐さん。片桐さんが、可愛いからキレイなとこで写真とってきたいって、とらきちとまどかと海ちゃん、貸してあげたんだ」 「ああ、やっぱり片桐ですか」 新名さんが、ちょっとだけ恐くなった気がした。 けど、すぐにこーって、いつも通り笑ってくれたから、見間違いだったのかも。 「片桐さん、なんで交代したの?」 「急用が出来て、来られなくなっちゃったんですよ。それで買い物の荷物も、鍵も、預かってきたんです」 きゅうよう・・・あ、急な用事の事だ。 片桐さん、忙しいのかな。 こないだ来た時も、ちょっと疲れてるみたいだったし。 「片桐さん、大変なんですね。大丈夫かな・・・」 「大丈夫ですよ。頑丈ですから、あれくらいじゃ何ともないでしょう」 それから、新名さんとおしゃべりしながら親子丼を作って、2人でいっしょに食べた。 「熱いので、火傷しないでくださいね」 「うんっ」 ちゃんとふーふーしてから食べる。 卵がとろとろで、とってもおいしい。 「ほいひー!」 「良かった。お嬢と2人でご飯作って食べられるなんて、嬉しいです。ずっと2人でいたいです」 え、ずっと・・・? ずっとじゃないよ、麗彪さん帰ってくるもん。 シュークリーム買って、おやつの時間に帰ってくるって・・・。 「俺とずっと一緒は、嫌ですか?」 「え?・・・ぇと、いやじゃない、けど、麗彪さん帰ってくるから・・・」 「じゃあ、麗彪さんが居れば、俺も一緒に居ていいですか?駿河(するが)時任(ときとう)みたいに、お嬢の傍に居ていいですか?」 新名さんが、真剣な顔で言った。 恐くない、けど笑ってない。 どおして、そんな事、聞くの? ぼくは、新名さんがいっしょでもいいけど、麗彪さんは・・・。 前に、電話で、すごく怒られた。 麗彪さんは、新名さんの事、嫌いなのかもしれない・・・。 「ぼく・・・いいよって、言えません。ごめんなさい。麗彪さんに聞かないと・・・」 「じゃあ、これだけ、正直に答えて・・・俺の事、好きですか、嫌いですか?」 どおして、そんな悲しそおな顔で聞くの? 嫌いなんかじゃないよ。 だから、そんな顔しないで・・・。 「好きですよ。新名さんの事、嫌いになったりしません。だから・・・」 「美月っ!!」 麗彪さんの大きな声と、ばんってドアが開く音でびっくりして、持ってたおはしを落としちゃった。 まだお昼なのに、帰って来てくれた・・・。 「おい新名てめぇ、自分が何したか分かってんのか!?」 「分かってます。ちゃんと麗彪さんに連絡を入れて、お嬢のお昼ご飯を作りに来たんです」 「ああ゛!?」 どおしよ、麗彪さん、すごく怒ってる・・・。 新名さんが、来たから? ぼくのご飯、作りに来たから? ぼくが、いるから・・・? ぼくのせい・・・? 優しくて、大好きな麗彪さんが、恐いって思っちゃうなんて・・・。 麗彪さんが、あんな風に怒るなんて・・・。 ぼくが、悪いんだ・・・。

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