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仲直り
【美月 side】
何度も、美月は悪くないって、優しい声で言ってくれた。
頭を撫でてくれて、キスしてくれて、ぎゅってしてくれる。
こんなに優しくて、大好きな麗彪 さんが、恐いはずない。
どなったのだって、ぼくの事、心配してくれたからなんだ。
「・・・ょし、とらさ・・・」
「ん?」
「しんぱぃ、させて、ごめんなさぃ・・・」
「うん。でも美月が悪いんじゃないからな。もう謝んな」
ぼくが泣きやんで、もお大丈夫ってなったら、麗彪さんが新名 さんとお話ししてくるって言った。
新名さんは悪くないから、怒らないでって言ったら、麗彪さんはわかったって言って、優しく笑ってくれる。
それから、電話で時任 さんを呼ぼうとしたけど、こんこんってドアを叩く音がして、麗彪さんが見に行ったら、片桐 さんが入って来た。
「すみません、私が手間取ったせいです」
「いや、仕方ねぇだろ。美月は無事だから、取り敢えず付いててやってくれ。飯も途中だから」
「わかりました」
麗彪さん、ふり返って「すぐ戻るから飯ちゃんと食べとけよ」って言って、玄関から出て行っちゃった。
ぼくは、片桐さんといっしょに麗彪さんを待ちながら、新名さんが作ってくれた親子丼の残りを食べる。
おいしいのに、新名さんが心配で、でも麗彪さんは怒らないって言ってくれたから・・・。
だから、麗彪さんに言われた通り、ちゃんと残さないで食べて、新名さんにもごちそうさまでしたって、言わなきゃ。
「美月くんは、新名が恐くないんですか?」
食べてるぼくのとなりに座って、片桐さんが聞いてきた。
「・・・え、恐く、ないです。新名さんは優しいです。にこーって笑って、ぼくの事安心させてくれて、お料理も上手で・・・だから、麗彪さんが新名さんの事、嫌いなのかもって思って・・・それは、悲しいなって、思う・・・」
「麗彪さんも、新名も、好きなんですね」
「・・・好き、です。ぼく、新名さんも、片桐さんも、駿河 さんも時任さんもカンナさんもぱぱも、みんな好き」
「ありがとうございます」
だけど・・・一番好きで、特別なのは、麗彪さんだけ。
麗彪さんへの好きは、普通の好きじゃないから。
「前に、ぼく嫉妬して、麗彪さんに新名さんと仲よししないでって言っちゃった・・・やっぱり、仲よしになって欲しい。大好きな人たちがケンカするの、やだ・・・」
「大丈夫ですよ。きっと仲直りしてくれます。美月くんは笑顔で待っててあげてください」
「・・・はいっ!」
玄関が開いて、時任さんだけ帰って来た。
麗彪さんはまだ、新名さんとお話ししてるんだって。
時任さんも、大丈夫だからって言ってくれたから、ぼくは親子丼をちゃんと全部食べた。
新名さんが食べてなかった分は、片桐さんが食べちゃったけど、新名さんはもお食べないからって言ってた。
それから、いっしょにお皿洗いしながら、麗彪さんと新名さんが仲直りして帰ってくるの、待ってた。
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